彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第29話:ルーが激昂!? オウから問われた覚悟

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 「色々と教えていただきありがとうございました。しかし、なぜ私にこんなことまで説明してくださるのでしょうか?」
 
 俺は一つ頭に浮かんだ疑問をオウに向けた。
 
 なぜ、俺なんかのためにここまで教えてくれるのか。
 
 消耗品扱いされておかしくない男の俺に支配層がここまで話すのは、分不相応だ。
 
 「ハーッハッハッ」
 
 俺の質問を聞いた突然オウは笑い声をあげた。
 
 「???」
 
 俺はなぜ、オウが笑い出したのがわからず固まってしまった。
 
 「ハハハ、そうだな。ルー。こう見えて私は善良な一般市民には、女男関係なく公正で、寛大なんだぞ。そこのテイみたいに男嫌いではない」
 
 「オウ様!それは……」
 
 ここまで黙ってたテイがそう非難の声をあげた。
 それをオウは笑って制止した。そして、静かに俺を見つめてきた。
 
 「ルー、君はあの日、あの場に、たまたま居合わせた。それだけの理由で、君はボアと対峙しなくてはならない。そして、君が失敗したら、君はあの日、私の思力に焼かれた方がよかったと後悔するような目に合うだろう。君は、力を持たないただの一般市民だ。私やテイとは違う。だから、ボアがどんな女なのか、知るべきだと思ったんだ。そして、君はボアがどれだけ恐ろしい女か知った。それでも、我々に協力するかな?」
 
 ……これまで色々なオウの表情を見てきた。

 しかし、今日のオウの表情は、そのどれでもなかった。
 俺に覚悟を問いているのに、なぜかその表情は悲しげである……。
 
 その表情を見ながら俺はこの問いにどう回答しようか自問した。
 
 (…………)
 
 俺は自分の今この瞬間の現実を現実として受け止められなくなっている。

 それは、一つは飛田克樹としての人生がルーの人生と混じり合ったからだ。
 
 転生前の人生が本物じゃないのか……。

 今ルーとして生きているのはただの夢ではないのか……。

 逆に転生前の人生は、ルーが妄想しているだけなのでは……。

 こんな風に二つの人生、両方ともに実感が持てなくなっている。

 そして、最近目撃したオウやテイなど支配者クラスの思力、そして、巨大な思獣。

 さらに、それをあっさりと倒してしまう恐ろしい支配者。

 飛田克樹の人生はもとより、ルーとしての人生でもこんな経験はなかった。
 
 想像を超えた出来事はすべて夢ではないかと思えてしまう。
 
 ただその中で、何か心に引っ掛かるモノがあった。

 (妻子が目の前で……)

 そう思獣化した男の話だ。どんな人間かはわからない。
 もしかした、悪人で自分も甘い蜜を吸っていたかもしれない。

 それでも家族が目の前で酷く殺されるなんてのはあってはならないはずだ。
 
 飛田克樹の人生は幸せだった。それは妻と娘、家族がいたからだ。
 ルーのここ最近の日常は幸せではなかった。それは家族が近くにいなかったからだ。

 飛田克樹だろうがルーだろうが俺という人格は家族が何より大切だと心から思ってる。
 
 だから、赤の他人、まったく顔も知らない人とはいえ、家族をそんなひどい状況で奪われるなんて、とても許せない。
 
 (…………。怒りだ)
 
 そう、先程がらこれまでの自分にはなかった何かが心を占めていた。
 
 それは怒りだ。
 
 家族を何の抵抗感もなく奪う者達への怒りだ。

 どんな世界、どんな時代、どんな状況でも、私欲のため、支配者はためらいもなく家族を奪っていく。
 
 それは、許しがたい。
 
 俺の力が何か役に立つのではれば、なんとかしたい。
 
 俺はオウの目をまっすぐ見据えて答えた。
 
 「俺……、いや、私は一般市民から家族を奪うような支配者は許せません。私の力が役に立つのであれば、私はボアとの対決を厭いません」
 
 オウの目は、少し驚いたように大きくなった。
 
 「フー……。そうか。我々を助けてくるというのは、想定通りだったのだがね。そんなに君が怒ると思ってなかったよ。逆に話さない方がよかったかな」
 
 「…………。いえ、自分も今までは、本当の覚悟はしてなかったと思います。ただ巻き込まれただけだと。それだと多分失敗していたと思います。今、覚悟ができました。お話いただきありがとうございます」
 
 俺は自分に言い聞かせるようにオウに覚悟を伝えた。

 「それなら、これからは、さらに厳しく訓練しますわ。本当は始めからその覚悟を持ってもらわないといけないのですけど。これだから男は使えないの」
 
 テイがいつもの口調でそう言った。

 きっとこの空気を変えようとしてくれたのだろう。
 
 「ハハハ、テイ、君や私は党員だ。ルーみたいなか弱き市民を守り指導するのが使命だぞ。まったく、若いのに。そんな男を見下したらダメだぞ」
 
 オウは笑いながらテイを嗜めた。もちろんテイの意図を、わかってのことだ。
 
 「そうだ、ルー。いい覚悟を見せてもらったが、今日はこれまでの通りか弱き市民、軟弱な男でいるんだぞ」
 
 そうだった。俺が今日、オウの執務室に呼ばれたのもそのためだった。
 
 今日俺はオウと共にボアに呼び出されているのだ。
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