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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第20話:ルーが抜擢!? 急に告げられた異動
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(やっぱり、大人しく、目立たず、ひっそりと生きていこう……)
床に手をつけながら俺は、自分の決心を後悔しながらそう思った。
(いやいや、こんなことで諦めないぞ。今のはノーカンだ、ノーカン)
そう自分を奮い立たせて、顔を上げるとそこには、俺を見下すテイが立っていた。
今日は、あの日と違いジャージ姿だ。
地味な顔立ちでジャージ姿にも関わらず、その美少女ぶりは、全く失われていない。
ただ、表情に相当な怒気がこもっている……。
「あなた、想定の十分の一も使えないじゃない。そんなんでシー様のお役に立とうというのがおこがましいのよ」
貴様呼ばわりからあなた呼ばわりと格上げ?にはなったが、俺、いや、男を見下す態度は全く変わっていない。
「はあ、はあ、はあ、……が、頑張ります」
――この世界の流れに少しでも影響を与える。
そう決心した翌日、出勤して制服に着替えている俺に、上司が血相を変えてやってきた。
「ルーくん、ルーくん。一昨日、応援に行ったでしょ、何やらかしたの??大変なことになったよ」
普段あまり慌てない上司であったが、この日の朝は別だった。
「え、いや、身に覚えがまったく。ただ、朝まで突っ立っていただけですよ」
「本当に?何もしていない?でも、これはいったいどういうことだろう。こんなの前代未聞だよ」
「何ですか?何かまずいことでもおきたのですか?」
「まずいこと、いやー、喜ばしいことなのかな。いや、でも、大変なことだよ」
「いや、もったいぶらず、教えてくださいよー」
なぜか上司は煮え切らない様子で答えるのを躊躇している。
「うーん、ルーくん。異動だよ。君」
「え、異動??」
「そう、しかも、多分だけど初だと思うよ。武装警官に男がなるのは」
「…………えっ?」
「ま、死なないように頑張ってね」
「えーー!!」
上司は俺の肩に手をやってポンポン叩いた後、グッドサインを俺に見せて行ってしまった。
詳しくは着替えたら部屋に来てねとのことだった。
(あの夜のことと関係するよな、やっぱり……)
まさか、こんな展開になるとは思いもしなかった。
確かに、ボアへの対抗手段のひとつとして、あの日俺は、スクラップされるのを免れた。
何かしら向こうからコンタクトがあるのではとは想定していた。
でも、それは、内密に呼ばれるとか手紙が来るとか、そういうことだと思っていた。
それがこんなに急に、しかも武装警官へ異動だと。
上司の言う通り、武装警官はこのツバキ市の警察組織の中でもエリート中のエリートだ。
しかも、オウが部隊を直接率いており、常に前線で危険な任務をこなしている。思力の弱い男には荷が重すぎる仕事だ。
「……というわけで、午後には本部に行って、挨拶をしてきてね。明日からそちらの任務に就くから、荷物も今日整理しておいてね。君も大変だと思うけど、ルーくんの代わりの補充、なさそうなんだよね。休みなくなるよ」
そういって、上司は大きくため息をついた。茶化しているが、本音は俺を心配してくれており、俺との別れが寂しいのだ。
「異動の命令承知しました。これまでの御指導、大変感謝しております」
俺は、あえて堅苦しい挨拶をした。そして、
「俺が1ヶ月無事に生きてたら、食事連れて行ってくださいよー」
といつものゆるい先輩、後輩関係に戻って言った。
「もちろんだよ、高級な日ノ元料理を奢ってあげるよ」
「あー、それ、俺が1ヶ月後生きていない想定ですよね?いつものところでいいですよー」
お互い半分涙目になりながら、冗談をいいあった。
上司とは、警察官として社会に出た十四歳の頃からの付き合いだった。
この国で男がどういう風に生きて行くのか教えてくれた恩人だ。俺は、心の中で何度もお礼を言った。
その日の午後、俺は、ツバキ市の公安本部にいた。
華の国も日本と同じように地方自治体が公安組織を持っている。
そのトップを務めるのがオウであった。
また、これは全ての地方自治体にあるのではなく、ツバキ市が特別でもちろんボアとオウが作ったのだか、実力部隊がある。
それが武装警官で、そのトップもオウが兼任していた。
その部隊に配属になるのだから、俺がオウに挨拶に行くのは自然である。
実際、上司経由で、時間を指定され、オウの部屋に呼ばれていた。
あの夜の思力装纏したオウを思い出し、俺は、恐怖で緊張してきた。
今日はただの挨拶だけだ。そう言い聞かせて、俺は、ノックをした。
「ルー・シリューです。本日、異動の命を受けまして、挨拶にきました」
心臓はバクバクだが、声は思ったより大きく出せた。
「入れ!!」
中から、一声でオウと分かる力強い、それでいて美しい声で返事が反ってきた。
床に手をつけながら俺は、自分の決心を後悔しながらそう思った。
(いやいや、こんなことで諦めないぞ。今のはノーカンだ、ノーカン)
そう自分を奮い立たせて、顔を上げるとそこには、俺を見下すテイが立っていた。
今日は、あの日と違いジャージ姿だ。
地味な顔立ちでジャージ姿にも関わらず、その美少女ぶりは、全く失われていない。
ただ、表情に相当な怒気がこもっている……。
「あなた、想定の十分の一も使えないじゃない。そんなんでシー様のお役に立とうというのがおこがましいのよ」
貴様呼ばわりからあなた呼ばわりと格上げ?にはなったが、俺、いや、男を見下す態度は全く変わっていない。
「はあ、はあ、はあ、……が、頑張ります」
――この世界の流れに少しでも影響を与える。
そう決心した翌日、出勤して制服に着替えている俺に、上司が血相を変えてやってきた。
「ルーくん、ルーくん。一昨日、応援に行ったでしょ、何やらかしたの??大変なことになったよ」
普段あまり慌てない上司であったが、この日の朝は別だった。
「え、いや、身に覚えがまったく。ただ、朝まで突っ立っていただけですよ」
「本当に?何もしていない?でも、これはいったいどういうことだろう。こんなの前代未聞だよ」
「何ですか?何かまずいことでもおきたのですか?」
「まずいこと、いやー、喜ばしいことなのかな。いや、でも、大変なことだよ」
「いや、もったいぶらず、教えてくださいよー」
なぜか上司は煮え切らない様子で答えるのを躊躇している。
「うーん、ルーくん。異動だよ。君」
「え、異動??」
「そう、しかも、多分だけど初だと思うよ。武装警官に男がなるのは」
「…………えっ?」
「ま、死なないように頑張ってね」
「えーー!!」
上司は俺の肩に手をやってポンポン叩いた後、グッドサインを俺に見せて行ってしまった。
詳しくは着替えたら部屋に来てねとのことだった。
(あの夜のことと関係するよな、やっぱり……)
まさか、こんな展開になるとは思いもしなかった。
確かに、ボアへの対抗手段のひとつとして、あの日俺は、スクラップされるのを免れた。
何かしら向こうからコンタクトがあるのではとは想定していた。
でも、それは、内密に呼ばれるとか手紙が来るとか、そういうことだと思っていた。
それがこんなに急に、しかも武装警官へ異動だと。
上司の言う通り、武装警官はこのツバキ市の警察組織の中でもエリート中のエリートだ。
しかも、オウが部隊を直接率いており、常に前線で危険な任務をこなしている。思力の弱い男には荷が重すぎる仕事だ。
「……というわけで、午後には本部に行って、挨拶をしてきてね。明日からそちらの任務に就くから、荷物も今日整理しておいてね。君も大変だと思うけど、ルーくんの代わりの補充、なさそうなんだよね。休みなくなるよ」
そういって、上司は大きくため息をついた。茶化しているが、本音は俺を心配してくれており、俺との別れが寂しいのだ。
「異動の命令承知しました。これまでの御指導、大変感謝しております」
俺は、あえて堅苦しい挨拶をした。そして、
「俺が1ヶ月無事に生きてたら、食事連れて行ってくださいよー」
といつものゆるい先輩、後輩関係に戻って言った。
「もちろんだよ、高級な日ノ元料理を奢ってあげるよ」
「あー、それ、俺が1ヶ月後生きていない想定ですよね?いつものところでいいですよー」
お互い半分涙目になりながら、冗談をいいあった。
上司とは、警察官として社会に出た十四歳の頃からの付き合いだった。
この国で男がどういう風に生きて行くのか教えてくれた恩人だ。俺は、心の中で何度もお礼を言った。
その日の午後、俺は、ツバキ市の公安本部にいた。
華の国も日本と同じように地方自治体が公安組織を持っている。
そのトップを務めるのがオウであった。
また、これは全ての地方自治体にあるのではなく、ツバキ市が特別でもちろんボアとオウが作ったのだか、実力部隊がある。
それが武装警官で、そのトップもオウが兼任していた。
その部隊に配属になるのだから、俺がオウに挨拶に行くのは自然である。
実際、上司経由で、時間を指定され、オウの部屋に呼ばれていた。
あの夜の思力装纏したオウを思い出し、俺は、恐怖で緊張してきた。
今日はただの挨拶だけだ。そう言い聞かせて、俺は、ノックをした。
「ルー・シリューです。本日、異動の命を受けまして、挨拶にきました」
心臓はバクバクだが、声は思ったより大きく出せた。
「入れ!!」
中から、一声でオウと分かる力強い、それでいて美しい声で返事が反ってきた。
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