彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第11話:総書記様のお気に入りに!? 闘う覚悟を誓う夜明け

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「待て、テイよ。貴様、光は消せるか?」
 
 「シー様?」
 
 突然のシーの問いに俺だけでなくテイも驚いたようだ。
 
 「あ、あの、光?え、いや……」
 
 一瞬前に人生の終幕を覚悟した俺は回答にまごついてしまった。
 
 「貴様!!シー様が聞いているであろう。即刻答えよ!」
 
 テイがさらに俺にプレッシャーかける。
 
 光を消せるとは、電気のようにスイッチでということではないだろう。放たれた光をということか。
 
 「も、申し訳ありません。え、放たれた光を消す物理現象は存在します。私の思力でできるかは、試したことがないので分かりませんが……」
 
 俺は頭にその物理現象を思い浮かべながら答えた。
 
 「ほう、なるほどな。テイよ、こやつ使えるかもしれないぞ」
 
 「テイ様?それはどういう?」
 
 「ボアの思力様式スタイルは光だ。それへの対策になるかもということですね。シー様」
 
 テイの疑問にオウが代わりに答えた。
 
 「ああ。ボアとの対決は避けれないであろう。その時に備えて、可能性が少しでもあるなら試しておきたい。ボアの始末は次期総書記の私の役目だ。テイよ、こやつが使い物になるか試しておけ」
 
 「え、は、はい。シー様。しかし、男をですか?」
 
 「捨てるのは簡単だろう。オウへの対抗がまぐれなら、その時処分すればいいだろう。万が一にもボアの思力に対抗できるなら儲けものだ」
 
 シーの言葉には、俺を人扱いするような考えはまったくなかった。
 
 まさに消耗品。
 百円ショップの便利グッズのように役に立たなければ捨てればいいの精神だ。
 
 「ワーハッハッハ、シー様。ご存知のようにボア様、いや、ボアはプライドが非常に高い人間です。そんなボアが男に思力を丸裸にされ、足元を掬われるのを想像すると、とても愉快です。私自身、やられて腸が煮えくり返りましたが、ハハハ、それをボアが受けると考えると、たまりません」
 
 オウは豪快に笑いながらそう、シーに伝えた。そして、厳しい表情に戻して、俺にこういい放った。
 
 「ルーとか言ったな。貴様。貴様の説明はまったく分からんかったが、死ぬ気でボアの思力に対抗できる術を見つけろよ。一ヶ月後には私が試してやる」
 
 「は、ハイ。必ずやシー様のお役に立てるよう最大限の努力をいたします」
 
 オウに睨まれて、俺はそう、返事をするしかなかった。
 
 「シー様、ご命令通り、この男については、私が管理いたします。役に立ちそうであればまた報告いたします」
 
 テイがシーにそう言った後、間髪なく俺に向かって何かを放った。
 
 俺には全く見えなかったが、何かが俺の胸に刺さった。痛いのか苦しいのかよくわからない感覚が俺を襲った。
 
 鼓動の速さが急激に上がり、俺は胸を抑えてうずくまった。 
 
 「ルーとか言ったな。今夜のこと他言すれば命はないぞ。今、私の思力でお前にトラウマを作った。他言しようとすればそれだけで、貴様は、もがき苦しみながら死ぬであろう」
 
 テイは冷徹な声で俺に告げた。
 
 「も、もちろんです。テ、テイ様。私は常にシー様、いや、党に忠誠を誓っております。と、党への裏切りは絶対におかしません」
 
 俺は党への忠誠を見せるというこの国で生きていく上での模範解答を使ってテイに答えた。
 
 胸の苦しさのためなんとか声に出したくらいであったが、テイには届いたのか、「フン」という声だけテイから発せられた。
 
 なんとか俺はこの状況から無事に逃れることができそうだ。
 
 さらに厄介な状況になっているのかもだが、まずは、命があったことに感謝しよう。

 胸の苦しみを抑えながら、俺はそう少し安堵していた。

□ ■ ◆ ■ □

「では、私は中央へ戻るとしよう。オウよ、テイをよろしくな。ニヶ月後に会おう」
 
 シーはそう言って、ソファーから立ち上がり、俺のいる出口に向かってきた。
 
 (マズイ、なんとか立たなくては。)
 
 いくら思力を受けたからと言っても、中央政治局常務委員フラワーナインのメンバーが行く先を、うずくまって妨げるわけにはいかない。
 
 俺は気力を振り絞り、なんとか立ち上がって、入り口を開けた。
 
 シーは横目で俺を見ながら無言で通り過ぎた。

 その後にテイ、オウが続いた。
 
 コテージの玄関のドアはテイが開けた。俺はそこまで付いていくことができなかった。
 
 「付き添いは要らぬぞ。そもそも私がこんなところにいること自体、公になると問題だからな」
 
 シーはテイにそう伝えると、寒空の下、闇に消えて行った。
 
 「改めてよろしくお願いいたします。オウ様」
 
 シーを見送ったあと、テイはオウにそう挨拶をした。
 
 「………………」
 
 オウはまだ、シーの消えた暗闇を見つめている。
 
 「私は、不正と腐敗が大嫌いだ。だから、どこでも犯罪と戦ってきた……」
 
 唐突にオウは話し始めた。
 
 テイに向かって話しているのだろうが、視線は変わらず、闇夜の虚空に向けられていた。
 
 「ボア様、いや、ボアは、私に犯罪と戦うための最高の権力チカラを与えてくれた。わたしは、それを使って目の前の不正や腐敗犯罪をただ、ただ、殲滅してきた」
 
 「ハイ、オウ様の戦いはすでに華の国では伝説として語られております」
 
 「私が不正腐敗に勝利すればするほど、ボアの名声と権力も高まった。そして、それが新たな不正と腐敗を生んでいった。私は、本当は気付いていたのだがな。これはもっと大きな不正腐敗をなくすために仕方ないと自分に言い聞かせていたよ」
 
 「………………」
 
 「しかし、いつからか、この市では、それが一番大きな不正と腐敗になってしまった。テイよ、これから明るみになるボアの行い、想像を絶するものだぞ」
 
 「……はい、覚悟しております」 
 
 「私が撒いた種でもある。罰は後でも受けよう。だが、私が育てたとも言える腐敗の花、私自信で刈取り蹴りをつけよう」
 
 オウは淡々と決意をテイに話した。おそらくテイに話すことで、自分に言い聞かせていたのだろう。
 
 「ターニャ様は、もともと聡明で公正な方であったのだがな。そこに惹かれたのだが、最近は人が変わったかのように増長していた。腐敗に手を染めていたのも言うまでもない。」
 
 「はい、ターニャ様にも罰を受けてもらう必要があります」
 
 「そうだな、そして、その時は私もだ。だが、自分の名に恥じない生き方をするだけだ」
 
 「真実の英雄……ですね。我が党の真の党員として相応しい素敵なお名前です」
 
 「…………今の党に、真の党員はどれくらいいるのだ? 上から下まで誰もが自分の利のため腐敗に手を染めているようなものだ」
 
 「……少なくともシー様はその腐敗と戦い、党を真の改革精神に戻すつもりです。そのため、他の中央政治局常務委員フラワーナインや長老たちとも戦うでしょう」
 
 「ああ、先程の覚悟の闇。あんな底知れない思力は、初めて触れたよ。実力のない、血統だけの七光。それが評判だったのだがな」
 
 「オウ様!!それはシー様に不敬です!」
 
 「しかし、それが世間の評判だ。そして、その評判はまったく当てにならないな。私も遠くない将来、シー様の闇に裁かれることになるだろう。それまでにせめてもの罪滅ぼしに、ボアを討つ手助けをしよう」
 
 「オウ様、ありがとうございます」
 
 「では、私も帰るか、明日も仕事は山積みだからな。テイよ、シー様の密命を受けているからと行って、通常業務を疎かにすることは許さんぞ」
 
 最後はオウらしく豪快に笑いながらテイに向けて顔を向けた。
 
 「もちろんです。厳しいご指導よろしくお願いいたします」
 
 テイも若手らしく素直に挨拶をした。
 
「さて、私もテイもここにいることが漏れると不味いな。帰るとするか」
 
 「そうですね。お疲れ様でした」
 
 オウとテイが帰る流れになった。
 
 (やっと、これで俺も帰れる。長い1日だった。何回も死にかけた。早く寝たい)
 
 俺はそう安堵した。
 
 その瞬間、オウとテイが厳しい顔で俺を睨んだ。
 
 「おい、オマエ、朝まで誰も入れるなよ」
 と、オウ。
 
 「明日以降、あなたに連絡するわ。逃げることなどゆめゆめ考えないことね」
 とテイ。
 
 美女二人の厳しい睨みに俺はまたしても直立不動の姿勢をとるしかなかった。 
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