彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第9話:オウの懐柔!? シーが狙う大物

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「…………」

 シーのプレッシャーに当てられたのか、それともまだシーのプレッシャーに抗っているのかオウは黙っている。
 
 俺の位置からは表情すべては見えないがシーの顔を真正面に見ているのはわかる。
 
 ふいに禍々しきシーの漆黒のプレッシャーが少し和らぎ、同時にシーはこう言った。
 
 「ターニャの死刑だけはなんとか避けることを約束しよう」
 
 突然の申し出であった。

 今回、英聖国人の 死亡に深く関与しているボアの妹ターニャ。
 もし、これが殺人事件であるなら華の国の法律上、死刑の可能性が非常に高い。
 
 コテージからオウとターニャが出てくる時、確かにオウのターニャへの接し方は、市のVIPへの対応以上の接し方であった。
 
 (もしかして、オウとターニャはロマンシスな関係なのか?)
 
 この世界では、女性同士、ロマンシスという性的な関係や同性愛など超越した心の絆で結ばれたような関係性がある。
 
 男は、消耗品みたいなものなので、男と関係を深めるより女性同士が関係を深めるのが特に思力が高い支配者では一般的だ。
 
 もし、オウとターニャがロマンシスな関係であるなら、オウがシーに協力した結果、事件は明るみに出て、ターニャは死刑となることは避けたいだろう。
 
 「もし、お主が協力しなくとも、我々はこの事件を明るみにし、必ずボアを失脚させる。その時、ターニャの死刑は免れない」
 さらにシーは続けた。
 
 「シー、様、それは………」
 
 これまでになく、オウは動揺し、ここからでも瞳に涙が貯まっているのがわかるくらいであった。
 
 「ドラセナ・コンシンネ、お主の故郷の言葉で真実の英雄だったかな。それがお主の本当の名であろう」
 
 オウは確かに華の国の大半をめる人種とは少し外見が違っていた。
 おそらく華の国に取り込まれた辺境の小国の人種とのハーフであろう。
 
 「これまで、お主はその名に恥じない生き方をしてきた。これからもその生き方を貫かないか?」
 
 これまでに無機質だったシーの声にわずかだか優しさが、込められたような感じであった。
 
 いつの間にか禍々しいプレッシャーも消え、心地よい薄闇が広がっているような雰囲気になっていた。
 
 「アーー!!」
 
 オウは声を張り上げた。
 泣き声のようにも聞こえたし、戦士が、自分を鼓舞するときの雄叫びにも聞こえた。
 
 そして、スーと一息吸ってオウはこう答えた。
 
 「シー様、わかりました。私は全力でシー様に協力いたします」
 
 いつの間にかテイの拘束は解けており、オウはシーに忠誠の姿勢を取っていた。
 
 「ありがとう。オウよ。私のためでなく、この華の国に、真の理想を実現するため、今後も働いてほしい」
 
 シーは、少し微笑みを作り、そう返した。
 
 声だけは相変わらす無機質であったが。

□ ■ ◆ ■ □

「……して、今後どのように対応いたしましょうか。ご存知のようにこの市はボアの独裁支配となっており、私が今回の事件を明るみにしたところで、ボアは失脚しませんし、握り潰されるのみです」
 
 まだ先程のシーとオウが交わした会話の余韻が残る中、早速オウが今後の対応について作戦会議を始めた。
 
 流石、常に第一線で活躍している実務家だ。
 戦闘の時の怒りも、先程の動揺もなくなり、ただ冷静に課題に対応しようとしている。
 
 「…………、他にボアを失脚させることができる証拠を集めるのにどのくらいかかる?」
 
 「ニヶ月ほどあれば可能です。しかし、証拠があったところでこの市では無意味です」
 
 シーの問いにオウはそう答えた。 

 オウは事実を言ったかもしれないが、言外に、シーが証拠を持っても無駄だと受け取られかねない。

 案の定、テイが間に入った。
 
 「オウ、貴様、シー様に向かって失礼だぞ!!」
 
 「よい、テイよ。オウは事実を言ったまでだ。ボアのこの市での功績は中央でも評価が高い。中央にはボアと懇意にしてるものもいるしな。ただ証拠があっただけではオウの言う通りだ」
 
 「大変失礼なことを言ってしまいました。申し訳ありません。シー様。ただ、中央政治局常務委員フラワーナインにもボア様、いや、ボアがコネクションを持つ方がいるのは確かです」
 
 オウも自分の発言の危うさに気付いたのか、慌てて謝りながらそういった。
 
 シーは、特に意に介せず、なにか思案してる。

 少しの沈黙のあとシーは、話はじめた。
 
 
「…………、まずは証拠を集めてくれ。その後については、考えがある。四ヶ月後の代表大会、その時までにボアを失脚させないと、ボアの中央政治局常務委員フラワーナインのメンバー入りは確実となってしまう。そうすると手が出せなくなる」
 
 「承知しました。速やかに対処します。」
 
 オウはそう言って頭を下げた。
 
 指示だけを忠実に受け止める。その後や目的に、疑問があっても触れないでおく。
 
 実務家らしい対応だ。
 
 「テイもこのまま部下として使ってくれ。なかなかに優秀なものだ」
 
 「はい。大変助かります」
 
 「シー様。ありがとうございます。オウ様これまでの非礼お許し下さい。これからはシー様の目的のため、オウ様に従います」
 
 シーの提案にオウもテイも同意して、そう答えた。

 テイは先程の敵対関係から、あっさりと態度を変えた。このあたり、テイも優秀な実務家なのだろう。
 
 「さて、ところで、テイよ。何故、その男を中に入れた?」
 
 ふいにシーはそういった。
 
 シー、オウ、テイの注目が突然俺に集まった。
 
 地味であるが、整った顔立ちで、特に目は切れ長でまさしく金属を思わせる冷たさを持っているにも関わらず、それがなんとも言えないくら美しいテイ。
 
 トレードマークの赤みが掛かった髪と燃えるような瞳。外見だけでも他を圧倒するような美女であるオウ。
 
 そして、無機質にも関わらずこの世のものとは思えない、美少女なのか、美女なのかそれすらも考えるのがおこがましいほどの美を纏っているシー。
 
 三者三様の美女に睨まれた俺は、蛇に睨まれた たカエルごとく、ただ動けず、自分のこの先だけを、天に祈った。
 
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