彼女の独裁は止められない!? 〜超絶美女たちが支配する一党独裁国家に転生したら、絶対美少女の次期総書記様に気に入られた〜

歯牙内かつきち

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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗

第1話:異世界転生!?

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――オウの合星国領事館駆け込み事件の3ヶ月前
 
「転生って、駄目な女神や、メガネをかけたヘビースモーカーのおっさんが出てくるもんじゃないのかー」
 
 元いた前の世界を思い出すよう俺はそうぼやいた。自分の状況を無理やり自分に納得させるように。
 
 ただ、ぼやいたところで、混乱している自分の状況に整理がつくはずもなく、皮肉めいた一人言が続けて無意識に出てしまった。
 
 「そもそもヘビースモーカーのおっさんは英雄限定だから、俺には関係ないか」
 
 そう、俺は日本で暮らす平凡な公務員だった。妻と娘二人の四人暮らし。飛田克樹ひだかつきという名前であった。
 
 上の娘が六年生になるくらいから転生モノ(いわゆるなろう系だ)のアニメを見始めていて、休日にはサブスクで一緒に見ていた。
 中学生になったここ最近はもちろん一緒に見るなんてことはしてくれず、(それは姉より少し大人びた下の娘もだ(T_T))、一緒に見ていた作品の続編は一人寂しく見ていた。
 
 四十歳のおっさんの俺が転生なんて言葉を知っていたのはそんな理由だ。
 
 そんな俺は、この世界では、十八歳で、警察官をしており、ルー ・イシゥーという名前である。

 ただ、転生というのは正しくないかもしれない。
 
 なぜなら元の記憶を持ってこっちの世界でこれまで生まれ育ってきた訳ではない。また、ルーの体に日本で生きていた俺の人格が 移ったという訳でもなさそうだからだ。
 
 俺はこの十八年間ルーとして生きてきた。

 そして、ほんの数日前までは、確かにルーは日本での記憶や知識は持っていなかった。

 しかし、何故か今の俺は、四十年間日本で暮らしていた記憶や知識が頭の中で同居している。
 
 ほんの数日前までその記憶を持っていなかったのか不思議なくらい自然にだ。
 
 ある日急に前世の記憶が甦ったということでもない。それは、前世の記憶でなないからだ。
 
 つい数日前の日本で暮らしていたという感覚が確かにある。しかし、同じように数日前のルーとしての記憶もある。
 
 例えば、先週の日曜日、克樹は、娘と三人でファミレスに行った。妻が友達と遊びに行ったから、夕食は三人だけだったのだ。反抗期がまだ始まっていない長女は、俺にフリードリンクのコーヒーを持ってきてくれた。次女はずっとスマフォばっかりだったが。
 
 そんな日本での記憶が明確にあるが、同じように、ルーにも日曜日の記憶がある。久々の休みだったが、金もないので、どこにも行かず、家でコーヒーを淹れてたくらいだが。
 そして、その時には確かに日本の記憶なんて持っていなかった。
 
 なんとも不思議な感覚で、自分の感覚が整理できない状態だ。
 
 ただ、今はルーとして生きていて、そしてこの世界が日本でないことだけは確かだ。
 
 (定番の剣と魔法の世界じゃないんだよな)
 
 俺はルーとして生きるこの世界が現実だと確かめるように、この世界の状況を思い出してみた。
 
 この世界は、日本と文明や科学技術の水準はほとんど変わらない。感覚的には、日本で暮らしていた時の十年くらい遅れているくらいだ。携帯電話やネットはあるし、スマートフォンのようなものも一般的になり始めている。
 
 そんな世界で、俺は、ここ華の国、ツバキ市で警官をしながら一人で暮らしている。
 
 世界の文明水準は大きく変わらないが、この華の国は、日本と全く社会システムが異なる。当然、日本の方が暮らしやすい。華の国で、男が一人で快適に暮らしていくのは、なかなかハードモードだ。
 
(転生前の知識と経験が、こっちではチートスキルで無双できるなんて展開もなさそうだな)
 
 偶然なのか、転生前も後も同じ公務員だった。ただ、転生前は事務屋で、今は肉体労働が主の警官である。もちろん、転生前の知識で無双はできない。
 
 今の状況を納得してもしなくてもルーとしての日常は変わらない。歯牙ない警官の下っぱとして今日も雑用にいそしむだけだ。
 
 俺は残ったコーヒーを飲み干して、仕事に出かける準備をした。
 
 「どちらの世界にもコーヒーがあるのは救いかな」
 
 半分なげやりに呟いて、俺は職場に向かった。
 
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