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常識
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藤林先生は腐っても藤林家の後継者だ。
1対1で万が一にも私に勝ち目はない。
その上、体育館では「弱点:フローリング」の私は逃げ出す事も出来ない。
勝てない、逃げれない何も出来ない私を見下しながら・・・
「晶、この子を体育倉庫に閉じ込めておきなさい」と言った。
するとどこからともなく現れた高山さんが「・・・御意」と言いながら私の首根っこを掴みながら、体育倉庫に連行して行った。
この細い体のどこに私を連行する力があるのだろうか?
高山さんは一言、私だけに聞こえる低い声で「すまない」と言った。
高山さんは私を体育倉庫に閉じ込めて外から鍵をかけた。
鍵は内側からは開けられない。
このままでは『鬼斬忍法帖』の調査データが藤林陣営に渡ってしまう。
別に私は男に戻るかどうかなんてどうでも良い。
でも悠子さんが莫大な費用を投じ、何とか私を男に戻す方法を探しているのに、私が不注意で敵の罠にハマって捕まってしまったせいでデータが敵の手に渡る、また迷惑をかける・・・という事がどうしても耐えられなかった。
私はここから何とか逃げる方法を探した。
体育館から体育倉庫に続く扉は高山さんの手で固く鍵がかけられているようね。
体育倉庫の中にも照明はあるみたい。
天井に蛍光灯がついているわ。
でも照明のスイッチは体育館側についているのかしら?
体育倉庫内に照明のスイッチは見当たらないし、体育倉庫内は薄暗いわ。
でも真っ暗ではないわ。
外に繋がる扉にはピアノ線入りのすりガラスがはまっていてそこから多少夕日の光が流れ込んでいるのね。
ただその扉も外から鍵がかかっていて内側からは開ける事は出来ないけど。
どうしようも無ければピアノ線入りのすりガラスを割るしかないけど、果たして私にこの頑丈なガラスを割るだけの力があるのかしら?
そんな事を私が考えていると、体育館倉庫の奥から緑色の光が見えた。
「何かしら?アレ・・・非常灯みたいだけど?」
近寄って行ってよく見てみる。
やっぱり非常灯だ。
鍵のかかったドアの上に緑色の字で非常口と書かれ、走っている緑色の人が描かれている。
ちょっと待って?この扉が非常口ならこの扉は外に繋がっているんじゃないかしら?
私はヘアピンを二本外すと、扉の鍵をピッキングの要領で外した。
「高校在学中は決して盗みはすまい、ピッキングはすまい」と思っていたけど、今回だけはピッキングを仕込んでくれた父親に感謝ね。
鍵を外し、扉を開けるとそこは体育館マットが沢山敷かれたスペースだった。
「何?ここ?体操部の練習場?」
そう思った理由はここには鉄棒やあん馬など体操部でないと使わない物があったからだ。
しかしこの練習場は最近使われた様子がない。
マットも器具もうっすら埃がつもっている。
いけない、今はここが何かよりも脱出経路の確保が優先だったわ。
案の定、練習場にある非常灯が付いている扉の鍵を開けると、体育館の外に逃げる事が出来るようだ。
扉の鍵はピッキングで開けれる。
当たり前だ。鍵で開けれもしない扉が非常口になる訳がない。
私はどんな鍵でも針金2本でピッキングできるように父親に仕込まれている。
私が非常口に近づこうとした時・・・
「体育倉庫に閉じ込られた人間が全く騒がないんでおかしいと思って見てみたら・・・。
まさか旧体操部練習場の扉から逃げ出そうとしてたとはね。
何で私がここを知っているのかって?
扉の鍵を開けた後、内側からキチンと鍵をかけたのに・・・何でここに私がいるのかって?
答えは簡単。
私がこの男子体操部練習場の鍵をもっていたからよ。
私は去年この男子体操部の唯一の入部者だったの。
夏休み前に女になってからは部活には出れなくなったけれどね。
だって私が入っていたのは『男子体操部』なんですもの。
女になった私には部活に出る権利がなくなったって訳。
種明かしはこれでお仕舞い。
あなたの解錠の技術について聞きたい事もあるけど・・・あまりにも技術が高すぎるわ。
でも今回はそれはどうでも良いわ。
私が伊吹樣の命令にさえ従えば、孝行樣の治療が続行される・・・いえ、何でもないわ。
とにかくあなたは脱出失敗よ。
手荒な事はあんまりしたくないけど、今回は手足を拘束させてもらうわ」
万事休すか。
いや、諦める前に一つ試す事がある。
私が昔から使えた唯一の忍術『畳返し』だが、忍者として成長した私は本当に沢山の畳を返せるようになった。
今私がひっくり返さなくてはいけない物は「畳しか返せない」という常識だ。
もしかして今なら畳以外の物もひっくり返せるかも知れない。
私はこの敷き詰められた体育館マットを返してみせる。
そして、必ずここから悠子さんや聡子さんのところまで逃げおおせてみせる。
1対1で万が一にも私に勝ち目はない。
その上、体育館では「弱点:フローリング」の私は逃げ出す事も出来ない。
勝てない、逃げれない何も出来ない私を見下しながら・・・
「晶、この子を体育倉庫に閉じ込めておきなさい」と言った。
するとどこからともなく現れた高山さんが「・・・御意」と言いながら私の首根っこを掴みながら、体育倉庫に連行して行った。
この細い体のどこに私を連行する力があるのだろうか?
高山さんは一言、私だけに聞こえる低い声で「すまない」と言った。
高山さんは私を体育倉庫に閉じ込めて外から鍵をかけた。
鍵は内側からは開けられない。
このままでは『鬼斬忍法帖』の調査データが藤林陣営に渡ってしまう。
別に私は男に戻るかどうかなんてどうでも良い。
でも悠子さんが莫大な費用を投じ、何とか私を男に戻す方法を探しているのに、私が不注意で敵の罠にハマって捕まってしまったせいでデータが敵の手に渡る、また迷惑をかける・・・という事がどうしても耐えられなかった。
私はここから何とか逃げる方法を探した。
体育館から体育倉庫に続く扉は高山さんの手で固く鍵がかけられているようね。
体育倉庫の中にも照明はあるみたい。
天井に蛍光灯がついているわ。
でも照明のスイッチは体育館側についているのかしら?
体育倉庫内に照明のスイッチは見当たらないし、体育倉庫内は薄暗いわ。
でも真っ暗ではないわ。
外に繋がる扉にはピアノ線入りのすりガラスがはまっていてそこから多少夕日の光が流れ込んでいるのね。
ただその扉も外から鍵がかかっていて内側からは開ける事は出来ないけど。
どうしようも無ければピアノ線入りのすりガラスを割るしかないけど、果たして私にこの頑丈なガラスを割るだけの力があるのかしら?
そんな事を私が考えていると、体育館倉庫の奥から緑色の光が見えた。
「何かしら?アレ・・・非常灯みたいだけど?」
近寄って行ってよく見てみる。
やっぱり非常灯だ。
鍵のかかったドアの上に緑色の字で非常口と書かれ、走っている緑色の人が描かれている。
ちょっと待って?この扉が非常口ならこの扉は外に繋がっているんじゃないかしら?
私はヘアピンを二本外すと、扉の鍵をピッキングの要領で外した。
「高校在学中は決して盗みはすまい、ピッキングはすまい」と思っていたけど、今回だけはピッキングを仕込んでくれた父親に感謝ね。
鍵を外し、扉を開けるとそこは体育館マットが沢山敷かれたスペースだった。
「何?ここ?体操部の練習場?」
そう思った理由はここには鉄棒やあん馬など体操部でないと使わない物があったからだ。
しかしこの練習場は最近使われた様子がない。
マットも器具もうっすら埃がつもっている。
いけない、今はここが何かよりも脱出経路の確保が優先だったわ。
案の定、練習場にある非常灯が付いている扉の鍵を開けると、体育館の外に逃げる事が出来るようだ。
扉の鍵はピッキングで開けれる。
当たり前だ。鍵で開けれもしない扉が非常口になる訳がない。
私はどんな鍵でも針金2本でピッキングできるように父親に仕込まれている。
私が非常口に近づこうとした時・・・
「体育倉庫に閉じ込られた人間が全く騒がないんでおかしいと思って見てみたら・・・。
まさか旧体操部練習場の扉から逃げ出そうとしてたとはね。
何で私がここを知っているのかって?
扉の鍵を開けた後、内側からキチンと鍵をかけたのに・・・何でここに私がいるのかって?
答えは簡単。
私がこの男子体操部練習場の鍵をもっていたからよ。
私は去年この男子体操部の唯一の入部者だったの。
夏休み前に女になってからは部活には出れなくなったけれどね。
だって私が入っていたのは『男子体操部』なんですもの。
女になった私には部活に出る権利がなくなったって訳。
種明かしはこれでお仕舞い。
あなたの解錠の技術について聞きたい事もあるけど・・・あまりにも技術が高すぎるわ。
でも今回はそれはどうでも良いわ。
私が伊吹樣の命令にさえ従えば、孝行樣の治療が続行される・・・いえ、何でもないわ。
とにかくあなたは脱出失敗よ。
手荒な事はあんまりしたくないけど、今回は手足を拘束させてもらうわ」
万事休すか。
いや、諦める前に一つ試す事がある。
私が昔から使えた唯一の忍術『畳返し』だが、忍者として成長した私は本当に沢山の畳を返せるようになった。
今私がひっくり返さなくてはいけない物は「畳しか返せない」という常識だ。
もしかして今なら畳以外の物もひっくり返せるかも知れない。
私はこの敷き詰められた体育館マットを返してみせる。
そして、必ずここから悠子さんや聡子さんのところまで逃げおおせてみせる。
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