【完結・前編】俺なりの恩返し…あれ？…もしかして、恩返しになってない？

恩返しって…

４

ガタガタガタガタ…

俺から目を逸らし、正座の上の自分の拳を見つめながら震え続ける爽…


いやいやいやいや、…そんなビビんなくても良くない…？

見た目にもヤバい、人食いみたいなバケモンが家を訪ねてきたわけでもあるまいし、
そもそも俺は、この人間界ではかなりイケメンの部類のはずなんだけど…

いや、それは絶対、間違いねえ…

ここに来る前に、デパートのでかい鏡で全体像を見てきたが、なかなかイイ男だ…１９０近い長身に、細身ではあるが、筋肉質な身体つき…艶やかな黒髪、切れ長の目…。

店の女店員もチラチラと俺を見ているのがわかった。
もちろん、街で逆ナンみたいなのも数回あって、本当はよだれ垂らして飛びつきそうになるのを我慢して、今日は全ての誘惑を振り切って、ここにやってきた。

…そう…全ては…コイツに恩を返すためだ…。


ただ…とにもかくにもビビり過ぎてるから、まずはきちんと順を追って話をしねえと…。

俺はドカッと床に座り込んであぐらをかき、震えている爽に少しだけ顔を近づけ、まじまじと顔を見る。

その俺の一連の動きに、ビクンと…爽が身体を痙攣させるように反応させる…
視線が泳ぐ泳ぐ…　左右に泳ぎまくる…　なんか、可愛いな…

ちょっとコイツ、警戒しすぎ…
何も、取って喰おうって、わけじゃないんだけど…

まあ、違う意味で、後から食うつもりではあるんだけど…　くく。


いや、それにしても、この爽って奴も、相当なイケメンの部類に違いないな…。

肌は…5年前に会った時と変わらず、かなり白い…
瞳はあの時は気付かなかったけど、茶色で…うん、かなり色素が薄い…みたいだ。
鼻梁がすっとしていて…そこに、眼鏡…なんか、インテリっぽい…。
この眼鏡が、コイツの綺麗な顔をぼかし、逆に、冷たく見せている印象だ…

あれ…あんときは確か眼鏡なんてかけてなかったな…そっか、視力、下がったんか…

身長は…俺はあんときまだ、お子様だったからかまあまあコイツのことがデカく見えてたんだけど、全然だな…
１７３～４センチ…？それ位だろうか。
まあ、男としてチビでもなく、中肉中背の一般的な体形だな。

まあ、人間観察はこれくらいしにして、本題に入ろう。

「もうあんまり、ビビらないでください、俺、マジで5年前の、恩返しに来ただけっすから…。」