【完結・後編】俺なりの恩返し…あれ？…もしかして、恩返しになってない？

ナツ・side

質問

戻りたいか… ？そりゃ…聞かれたら…
戻りたいに決まってる…

犬の世界…
仲間がいるから一応食うものには全く困らないし、メスはよりどりみどりだ…

性欲なんて、俺のしたい時に好きに…発散できてた。
俺が迫って嫌がるメスなんていない…とにかく俺はモテる… モテてた…
そう… 
確かに…そうなんだけど…

今、自分自身にもう一度、自問自答する。


俺は犬に戻りたいのか…？
この世界に…
人間界に、本当に未練はないのか… 

俺は椅子に座ったまま、爽を見上げる。

「ナツ… どう、なんだ…戻りたい…？」

いやだ…無理だ…
こいつがいる限り… 爽がいる限り…
俺はこいつの近くにいたい…

犬じゃなくて…
人間としてこいつの傍に…近くにいたい…  できれば…  ずっと…

「… 俺は… … 」

体温が一気に上昇する…
もう、言ってしまおう…
俺のこの気持ちを…言って、いっそ楽になりたい…   

爽が好きだ…
犬になんて、戻らなくていい…
このまま、人間としてお前のそばにいられたら…俺はもう、それで…いいんだ…

でも、やっぱ無理かな…  
拒否られるかな…

拒絶…されたら、それは仕方ない…
その時、また…考えよう…

俺は真っ直ぐに爽を見つめて、
口を開いた。