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責任
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それから、数日が過ぎた。
依然として克之とラインなどで連絡はとりあっていたが、お互いに仕事が段々と忙しい時期に突入し、それに加えて新しく子供の習い事も始まったため、私は克之のことを考える時間が前に比べると、少なくなってきていた。
そしてそれが私にとっては、救いだった。
たとえこの先、克之と続いていく関係があるとしても、それに集中し過ぎることで、周りのことがおろそかになり、家庭や職場に悪い影響を与えてしまうような事態は、絶対に避けたかったからだ。
仕事から離れても、食事の準備、掃除に洗濯、子供の宿題の添削など、しなければならないことは毎日山積している。
物思いにふけったり読書をしたりといった、ゆっくりとした自分だけの時間は、日常の仕事が一息ついた、夜の一時間といったところ。
ただ、贅沢を言えないのは、夫もそれなりに家事をこなすこと。夫は一人暮らしの経験もあるため、大抵の家事はこなす。
料理だけはあまりしないが、掃除、洗濯、朝のゴミ捨てなど、こちらから言わなくてもサッと動く。私の動きの効率の悪さを見兼ねて、自ら動いた方が早いと、考えているのかもしれない…。
最近ではむしろ、夫の方が家事に長けているのでは…と感心してしまうほど、全ての作業の要領が良い気がする。
だから私は夫に対し、総じて大きな不満はなかったように思う。たまに浴びせられる暴言には傷付くこともあるが、やはり長年の慣れもあり、耐えられる範囲だと、なかば諦めていた。
でも最近、克之の存在が私の中で大きくなってきて、思うことがある。
もっと…夫が悪い人間であれば良かったのに…と。
少しの気配りが出来なかったり、言葉足らずだったり…気分屋のようなところが悪い点ではあるが、決して人格そのものを否定されるようなマイナス面は、夫には見当たらない。
だから、夫がたまに優しいときや、家族で過ごす幸せな時間に、ふと私の中に、罪悪感が生まれる…。
この夫と家族を裏切って良い理由が、いったいどこにあるのか…と。
どこまでも身勝手な女。
…私は自分を分析する。
自分が不倫をしてよい理由を、なんとか家庭に見出だそうとしている。自分は悪くないと…。
自分が道を外したのは、夫が、家庭が、悪いせいなんだと…自分の行動を正当化するかのように。
でもそれは違う。私にはわかっている。
人が自分の行動を、何かのせいにするのはとても簡単で、後々それが自分を守る術になるのかもしれない。
それでも、たとえそうだとしても、最終的に選択するのは自分だから…責任逃れなんてできるわけがない。人がどうであろうと、私はそう、考える。
悪いのは、私だ。
愛すべき家族がいながら、他の男性を好きになってしまった。
私は操られた人形じゃない。
誰かに強制されたわけでもなく、
夫や家庭が悪いわけでもなく、
私は私の意思で…克之と
繋がろうとしている、それが全て。
キスをして、このうえない幸せを感じた。
夫のせいじゃないし、家庭のせいでもない。
ましてや、この先にどんなことがあっても、
克之に流された、とは、絶対に言わない。
責任転嫁は絶対にしない。
立場をわきまえていないおかしな言い分だと言われても、世間に非難されるべき不倫だと、わかってはいても、私はこれから克之と、真剣に向き合う。
私はそう決意して、
眠る前の克之とのラインを楽しみに、今日も夜の家事をこなす。
依然として克之とラインなどで連絡はとりあっていたが、お互いに仕事が段々と忙しい時期に突入し、それに加えて新しく子供の習い事も始まったため、私は克之のことを考える時間が前に比べると、少なくなってきていた。
そしてそれが私にとっては、救いだった。
たとえこの先、克之と続いていく関係があるとしても、それに集中し過ぎることで、周りのことがおろそかになり、家庭や職場に悪い影響を与えてしまうような事態は、絶対に避けたかったからだ。
仕事から離れても、食事の準備、掃除に洗濯、子供の宿題の添削など、しなければならないことは毎日山積している。
物思いにふけったり読書をしたりといった、ゆっくりとした自分だけの時間は、日常の仕事が一息ついた、夜の一時間といったところ。
ただ、贅沢を言えないのは、夫もそれなりに家事をこなすこと。夫は一人暮らしの経験もあるため、大抵の家事はこなす。
料理だけはあまりしないが、掃除、洗濯、朝のゴミ捨てなど、こちらから言わなくてもサッと動く。私の動きの効率の悪さを見兼ねて、自ら動いた方が早いと、考えているのかもしれない…。
最近ではむしろ、夫の方が家事に長けているのでは…と感心してしまうほど、全ての作業の要領が良い気がする。
だから私は夫に対し、総じて大きな不満はなかったように思う。たまに浴びせられる暴言には傷付くこともあるが、やはり長年の慣れもあり、耐えられる範囲だと、なかば諦めていた。
でも最近、克之の存在が私の中で大きくなってきて、思うことがある。
もっと…夫が悪い人間であれば良かったのに…と。
少しの気配りが出来なかったり、言葉足らずだったり…気分屋のようなところが悪い点ではあるが、決して人格そのものを否定されるようなマイナス面は、夫には見当たらない。
だから、夫がたまに優しいときや、家族で過ごす幸せな時間に、ふと私の中に、罪悪感が生まれる…。
この夫と家族を裏切って良い理由が、いったいどこにあるのか…と。
どこまでも身勝手な女。
…私は自分を分析する。
自分が不倫をしてよい理由を、なんとか家庭に見出だそうとしている。自分は悪くないと…。
自分が道を外したのは、夫が、家庭が、悪いせいなんだと…自分の行動を正当化するかのように。
でもそれは違う。私にはわかっている。
人が自分の行動を、何かのせいにするのはとても簡単で、後々それが自分を守る術になるのかもしれない。
それでも、たとえそうだとしても、最終的に選択するのは自分だから…責任逃れなんてできるわけがない。人がどうであろうと、私はそう、考える。
悪いのは、私だ。
愛すべき家族がいながら、他の男性を好きになってしまった。
私は操られた人形じゃない。
誰かに強制されたわけでもなく、
夫や家庭が悪いわけでもなく、
私は私の意思で…克之と
繋がろうとしている、それが全て。
キスをして、このうえない幸せを感じた。
夫のせいじゃないし、家庭のせいでもない。
ましてや、この先にどんなことがあっても、
克之に流された、とは、絶対に言わない。
責任転嫁は絶対にしない。
立場をわきまえていないおかしな言い分だと言われても、世間に非難されるべき不倫だと、わかってはいても、私はこれから克之と、真剣に向き合う。
私はそう決意して、
眠る前の克之とのラインを楽しみに、今日も夜の家事をこなす。
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