17 / 26
克之の告白
しおりを挟む
克之が話し出す。
「あの、この前はすみませんでした。でも、あれは決してふざけているとかではなく、僕の本心なんです。
実は、岡田さんのことが段々と気になっていました。本当に素敵な方だと思っていますし、貴女の希望が本当はなんなのかわからないけど、僕にできることなら、聞いてあげたいというか…受け入れたいと思っています。」
克之は前を向いたまま、こちらを1度も見ることなく、一気に語った。
さらに続ける。
「ただ、せっかくのご家族での旅行中に、わざわざ言うべきことではなかった。その点は、本当に反省しているんです。ごめんなさい」と、やっとこちらを真っ直ぐに見て、頭を下げながら、告げられた。
克之と目が合う。
私は耐えられず、思わず顔を逸らす…顔が熱い。
その後はなぜか、その話題を避けるかのように、私たちはお互いに、他愛もない話をし続けた。
少し気になっていた克之の過去の恋愛について私が尋ねたり、克之から聞かれるままに、自分の結婚生活について答えるなどしていたら、あっという間に時が過ぎていた。
克之が会計を済ませ、二人で店を出る。
5月の夜風が気持ち良く、私たちの間を鮮やかにすり抜けて行く。
2人が別れる場所まで、決して不快ではない沈黙状態が続いた。
私は克之の少し後ろをついて行きながら、どうしようもない、胸の渇きを感じた。
そしてやっと、自覚した。
今すぐ、その手で触れて欲しい。
優しい腕で、抱き締めて…欲しい。
まだ本当は、離れたく、ない。
もっと、一緒にいたい…。
私のこころが、そう、静かに訴えている…。
夫ではない他の異性に、そのような感情を抱いてしまっている自分が…確かに、そこにいた。
「今日はごちそうさまでした。ではまた。」と、克之に別れの挨拶を交わし、一人、バスに乗る。
克之がバスの外から、
少し困ったような苦しげな表情を私に向けながら、手をふる。
この夜、卑怯な私は、自分の気持ちに気づきながらも、克之の告白に、答えることも、拒否をすることもせずに、その場から逃げ出した。
今ならまだ間に合う…引き返せる。
いっそ今すぐ、克之の方から離れてくれたらいい。
自分の胸の苦しさのあまり、
ずるい私は、そんなことを考えはじめていた…。
「あの、この前はすみませんでした。でも、あれは決してふざけているとかではなく、僕の本心なんです。
実は、岡田さんのことが段々と気になっていました。本当に素敵な方だと思っていますし、貴女の希望が本当はなんなのかわからないけど、僕にできることなら、聞いてあげたいというか…受け入れたいと思っています。」
克之は前を向いたまま、こちらを1度も見ることなく、一気に語った。
さらに続ける。
「ただ、せっかくのご家族での旅行中に、わざわざ言うべきことではなかった。その点は、本当に反省しているんです。ごめんなさい」と、やっとこちらを真っ直ぐに見て、頭を下げながら、告げられた。
克之と目が合う。
私は耐えられず、思わず顔を逸らす…顔が熱い。
その後はなぜか、その話題を避けるかのように、私たちはお互いに、他愛もない話をし続けた。
少し気になっていた克之の過去の恋愛について私が尋ねたり、克之から聞かれるままに、自分の結婚生活について答えるなどしていたら、あっという間に時が過ぎていた。
克之が会計を済ませ、二人で店を出る。
5月の夜風が気持ち良く、私たちの間を鮮やかにすり抜けて行く。
2人が別れる場所まで、決して不快ではない沈黙状態が続いた。
私は克之の少し後ろをついて行きながら、どうしようもない、胸の渇きを感じた。
そしてやっと、自覚した。
今すぐ、その手で触れて欲しい。
優しい腕で、抱き締めて…欲しい。
まだ本当は、離れたく、ない。
もっと、一緒にいたい…。
私のこころが、そう、静かに訴えている…。
夫ではない他の異性に、そのような感情を抱いてしまっている自分が…確かに、そこにいた。
「今日はごちそうさまでした。ではまた。」と、克之に別れの挨拶を交わし、一人、バスに乗る。
克之がバスの外から、
少し困ったような苦しげな表情を私に向けながら、手をふる。
この夜、卑怯な私は、自分の気持ちに気づきながらも、克之の告白に、答えることも、拒否をすることもせずに、その場から逃げ出した。
今ならまだ間に合う…引き返せる。
いっそ今すぐ、克之の方から離れてくれたらいい。
自分の胸の苦しさのあまり、
ずるい私は、そんなことを考えはじめていた…。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる