【完結】ダメなのはわかってる、それでも。

もえこ

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克之の告白

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克之が話し出す。

「あの、この前はすみませんでした。でも、あれは決してふざけているとかではなく、僕の本心なんです。
実は、岡田さんのことが段々と気になっていました。本当に素敵な方だと思っていますし、貴女の希望が本当はなんなのかわからないけど、僕にできることなら、聞いてあげたいというか…受け入れたいと思っています。」

克之は前を向いたまま、こちらを1度も見ることなく、一気に語った。

さらに続ける。

「ただ、せっかくのご家族での旅行中に、わざわざ言うべきことではなかった。その点は、本当に反省しているんです。ごめんなさい」と、やっとこちらを真っ直ぐに見て、頭を下げながら、告げられた。

克之と目が合う。

私は耐えられず、思わず顔を逸らす…顔が熱い。
 
その後はなぜか、その話題を避けるかのように、私たちはお互いに、他愛もない話をし続けた。

少し気になっていた克之の過去の恋愛について私が尋ねたり、克之から聞かれるままに、自分の結婚生活について答えるなどしていたら、あっという間に時が過ぎていた。

克之が会計を済ませ、二人で店を出る。

5月の夜風が気持ち良く、私たちの間を鮮やかにすり抜けて行く。

2人が別れる場所まで、決して不快ではない沈黙状態が続いた。

私は克之の少し後ろをついて行きながら、どうしようもない、胸の渇きを感じた。
          
    そしてやっと、自覚した。



 今すぐ、その手で触れて欲しい。
  優しい腕で、抱き締めて…欲しい。
   まだ本当は、離れたく、ない。
    もっと、一緒にいたい…。

私のこころが、そう、静かに訴えている…。

夫ではない他の異性に、そのような感情を抱いてしまっている自分が…確かに、そこにいた。

「今日はごちそうさまでした。ではまた。」と、克之に別れの挨拶を交わし、一人、バスに乗る。

克之がバスの外から、
少し困ったような苦しげな表情を私に向けながら、手をふる。

この夜、卑怯な私は、自分の気持ちに気づきながらも、克之の告白に、答えることも、拒否をすることもせずに、その場から逃げ出した。

今ならまだ間に合う…引き返せる。

いっそ今すぐ、克之の方から離れてくれたらいい。

自分の胸の苦しさのあまり、
ずるい私は、そんなことを考えはじめていた…。

                
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