【完結】ダメなのはわかってる、それでも。

もえこ

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家族

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連休に、久しぶりに家族で東京へ旅行に出かけることになった。

夫婦共働き、お互いフルタイムで平日はもちろん、土日も時々仕事が入る私達にとっては、家族揃っての宿泊付きの旅行は久々のことだった。

今年の春、小学二年生になったばかりの息子は、旅行前日に大はしゃぎで、キャリーケースに、いそいそと着替えなどを小さな手で、詰めていく。

子供がニコニコと弾けるような笑顔を私や夫に向けながら準備する様子は、やはり、私を幸せな気分にさせた。

ただ、そんな中、ふと、考えてしまう。

克之は、今、何をしているのだろう?
連休はどのように過ごすのだろうか。

昨日の夜、克之といつものように雑談程度にラインはしたが、明日から旅行に行くことは、特に伝えていない。言うべきだろうか。いや、そんなことをいう関係性でもないか…などと、頭の中でそっと打ち消す。

「……さん、お母さん!」と、子供に声をかけられ
ハッとする。

「…なーに?そうくん、ごめんね、何??」

「お母さん、旅行のお菓子、何個入れていい?」

…なんて、、純粋な質問なんだろう。
可愛らしくて、つい抱きしめてしまう。

「何個でもいいけど、溶けちゃうのはだめだよ、あと、できれば、皆で分けられるのがいいね」

子供は太陽のような笑顔で「わかった!」と
微笑み、いそいそと準備を続けた。

最近、私はふと、物思いにふけることがある。
家族との会話中、テレビを観ている最中や、家族でのドライブ中など。

つい…克之のことを考えてしまう、自分がいる。

恋人でも家族でもない、単なる同僚のことに気を取られ、一番大切にすべき家族の会話に集中出来ていない自分自身に、一種…嫌悪感を覚える。

ダメな私。
母親失格だ。
明日からは、しっかり家族旅行を楽しむんだ。

そう決意した矢先、 
克之からラインがきたことに、気が付いた。

ただ、ラインを開けば会話が楽しく
いつも必ず、すぐに返信したくなってしまう。

そうすれば、また…一番身近な、家族を疎かにしてしまう。だからその日は、ラインをすぐに開きたい気持ちをなんとか抑えて、克之には申し訳ないが、未読スルーのままで、スマートフォンを置いた。

ズルい私。

でも今思えば、その頃はまだ、私はなんとか、
理性的でいられたのだ。

だが、その後の克之からの一通の連絡により、
私の理性は、ガラガラ音を立てながら、崩れてゆくことになるのだが、この時の私はまだ、自分自身を信じようと…もがいていた。

これまで、すべてのことに対して、真面目に、まっすぐに、一筋に…生きてきた私。

仕事にも恋愛にも、後ろ暗いことは一つもなく、
他人からの評価は別にして、
真面目で誠実に生きようとすることだけが、取り柄だった私が…

         まさか…

世間で言われている、悪や憎悪の対象とされる「不倫」に、足を踏み入れてしまうとは…


               
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