【完結】ダメなのはわかってる、それでも。

もえこ

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二次会

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お店を出て時間を確認したところ、まだ夜8時過ぎ。
でもきっと、この先は解散か…などと考えていると、克之が先に口を開いた。

「さて、どうします?もし、岡田さんのお時間が大丈夫なら、もう一軒…行きましょうか。希望があれば教えてください」と微笑む。

意外…

実はあっさり解散になるのではと、私は密かに考えていた。

「あ…はい、佐山さんが良ければ、私は大丈夫です。スイーツにしますか?もしくはお酒とか…?」

しばらく考えた後、克之が
「お任せで良ければ、行きたいところがあります。良いですか?」と尋ねてくる。

「もちろん」と私が笑って答えると、克之はゆっくり歩き始めた。

行き先は、バー。

カウンターのサイズに合わせた特注であろう横に長い水槽の中で、

様々な色の大小の熱帯魚が泳ぎ、店内は暗めでありながら、水槽内の煌めく蒼い光により幻想的な光を放っていた。

カウンターに横並びに座り、私は思わず発言する。

「佐山さん…こんな素敵なお店…私は来たの初めてです。こんな所に連れてこられたら、世の中の独身女性は、多分皆、佐山さんに惹かれてしまいますね。」

「いえいえ、そんなことは…」
克之が笑いながら、謙遜する。

これは、私の本心だった。

実のところ、私は夫とこのような場所に来たことが一度もなかった。
夫と私は中学時代からの同級生で、趣味や嗜好も似通っていて、行くお店もいわゆる庶民レベル。

唯一、プロポーズの時だけは夫がとても頑張って、高級レストランを予約してくれたのだけど。

だから私は…年齢も上で、あまりにも大人な雰囲気を醸し出す克之に、魅力を感じざるをえなかった。

結婚してから現在に至るまで、異性とこのような所に顔を出す機会は一度もなかったため、私は途端にドキドキし始める。

ただ、自分は決して若くもなく克之とは単なる同僚なのだと…なんとか落ち着き払ったフリをしながら、甘いカクテルと会話を楽しみ、その素敵な店を後にした。

克之にお礼をの言葉を告げ、立ち去ろうとした時、克之が遠慮がちに口を開く。
「また…良かったら食事に誘っても良いですか?」と…。

「はい、私で良ければ、いつでも。」
つい私も…頭で考えるより先に、そんな風に即答していた。

既婚で子持ち、決してそんな風に、即答できる状況でもない…のに。

ただ、克之といる時の自分の心の落ち着きと安心感。

ある意味で、すさんだ生活を送る私にとって、この日、克之と二人でいられた空間がひとときのオアシスのように感じられたのは、間違いなかった。

この日をきっかけに、
克之と私はその後、何度も連絡を取り合うようになり、お互いの心の渇きを癒すように、少しずつ…近づいていくことになる…

                
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