【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

新境地

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すぐそこに、哲也の気配…

「既に目を閉じているな…実に潔い…いい子だ…タイミングによるが、 君の希望どおりになることを祈っているよ…なるべく君が苦しまないことを…俺は心から、祈っている。 」

  タイミング…?

       意味が、わからない…

そして…    
人を一人、今から手にかけようとしている人間が…さすがに胸の内までは分かり得ないが…神妙に、祈りの言葉を捧げている…

最後の最後まで、おかしな男だ…
気が抜けてしまい、本当に思わず…笑みが溢れてしまう… 笑っている場合ではない状況にも関わらず…

「おや…何を笑っている…?
それにしてもやはり君は、笑うと本当に可愛らしい… 真由が君を好きになった気持ちが少し、わかるな…」哲也が呟く。

「… … … … … 」
男に可愛いなどと…言われたくは無い。
俺は目を閉じたまま、無視を決め込む。

「…最後に、お別れのキスをしていいかな…したいな…するぞ… 」

「…     え … 」

耳を疑った…   最後の、冗談か…  
「…ん、むっ…!!」
    だが、冗談ではなかった…

顎をつかまれ… いきなり唇を塞がれる… 
そうだ、この男は冗談が嫌いだ… と …前に

あっ… 嘘、だ …       

     んっ…  ん…    ぅ

男の舌が軽やかに…俺の口内に… 滑り込む…
舌を絡められ…  きつく、吸われる… 

俺は生まれて初めて、男と初めて… キスを…   
しかも、舌が …   
男の… 哲也の舌… が…口内をうごめく…

頭が真っ白になる…目を開けるのも、怖い…
「んんっ…  う … んっ…  」息が苦し…

次の瞬間、ちゅっと音を立てて唇が離れ、

「…本当に…反応すら、可愛い男だな…
交代の時間だ…
ゆっくり、おやすみ…清春くん…  」

交代…    
  そんな意味だとは…  

       微塵も…  


哲也の、甘い声…を最後に

       プ…ツ…   



チクリと、痛みが走った…  

首のあたりに…   

 何かを刺された…  針… みたいな…

   そう、… か…   注射針…   ?

    毒…  殺… …   か…  

「んっ!…   う…   ん…     ふ … 」
考える隙を与えずまた、唇を塞がれる…

まるで、飢えた…獣のように… 
哲也は俺の唇を、無心に貪る…なんなんだ…
やはり、両刀… ? …  意味がわからない

別れのキス、だと…?
お前が引き金を引いておきながら、その相手に…こんなにも激しいキスを…
     さっぱり、わからない…

やはり…この男は頭が、おかしい…
 
だがその唇は…
異常なほどに、柔らかい…

これは、新境地だ…  
男の唇はもっと、固いと…思っていた…
   
 意識が遠のく、寸前…   俺は

   そんな阿呆なことを、思った。
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