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清春編
斜め上
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あれは確か、
いつかの同期会の夜……
坂下~おまえさ…マジで真面目すぎ…酒、不味くなるって…
もっと、他人事と思えよ…所詮、そんなん遠い人…他人の話だろって…
人の不幸は蜜の味ってことば、あんだろ… ?そういう風に感じる輩もいるんだって…マジで、一定数はさ…
だから言ってんだろ…性善説、性悪説… 色々なんだよ…人間ってのはさ…
ほんと、おまえって融通利かんな…でも、俺はおまえのそーゆーとこ…他人事を自分のことのように真面目に考えるところがさ…マジすげえと思うわ…俺はおまえのそういうとこ、メチャ好きだぜ~はは… って…そんな感じで…
そっか、そうだよな、確かに他人事だ…考え過ぎだな…なんて言いながら、周りの少し引いたような雰囲気を感じ取って、ある意味同期に感謝しながらも、あの時は笑って…なんとか話を変えてはみたけど…
やっぱり現実は…
俺が想像していた通りだ…
いざ、当事者になると…
たまらない気持ちになる…
その立場になった者にしか絶対にわからない、感情だ…
そんな今…だからこそ、とにかく…
周りにはなるべく、バレないように…
密やかに…
いっそ俺を跡形もなく、消してほしい…
犯人特定などいらない…
かたき討ちなんて一切、不要だ…
ましてや、親には何の関係もない…
絶対に、年老いた親を追い詰めないで欲しい…
そんなことを考えてしまう俺の思考回路は、
既にどこかおかしくなってしまっているのかもしれない…
「おい…大丈夫か清春君…なんだかかわいそうだから、最後に…君の大好きな物思いに耽る時間を与えてやったが…さすがにそろそろ、時間だな… 」
男が小さな声で、ふふと
笑いながら呟いたのが聞こえた。
男が俺に一歩、近づく。
ゆっくりと、
もう一歩、近づく…
俺はゆっくりと、目を閉じる。
俺のこれまでの人生…
真由との出会い…そして結婚…
茉優子との出会い、その後の不倫…
そして、聞かされた真由と哲也の… そして、自殺未遂… …
色々あったが…
俺はやはり、自分が理想とする聖人君子には到底、なれなかった…
結果として、人間の欲に溺れ…
俺の存在が…俺の行動が…
二人の女を…
違う形の不幸に陥れたのだ…
確かに、
死ぬべきだ…
いつしか俺は、
自分自身で…
そう、思うようになった…
「さて…清春くん、最後の質問だ。
死に場所は、海がいい?
それとも山がいい?もしくは川か…?
もしくは、愛する女の近くか…何か希望はあるか…?」
「… は…?」
なんという、質問だ…
さすが… 哲也だ…
毎回、想像の…斜め上を行く…
答える力は、残っていなかったが、
「出来れば…苦しみたくない…」
俺がボソリと、本心を呟くと、
「承知したよ… だがそれは、俺がもともと考えていたことだから大丈夫だよ…俺も、君の苦しむ顔を、できれば見たくはないんだよ…」
そう、優しく笑って、
また、哲也が俺に一歩、
近づいた…
いつかの同期会の夜……
坂下~おまえさ…マジで真面目すぎ…酒、不味くなるって…
もっと、他人事と思えよ…所詮、そんなん遠い人…他人の話だろって…
人の不幸は蜜の味ってことば、あんだろ… ?そういう風に感じる輩もいるんだって…マジで、一定数はさ…
だから言ってんだろ…性善説、性悪説… 色々なんだよ…人間ってのはさ…
ほんと、おまえって融通利かんな…でも、俺はおまえのそーゆーとこ…他人事を自分のことのように真面目に考えるところがさ…マジすげえと思うわ…俺はおまえのそういうとこ、メチャ好きだぜ~はは… って…そんな感じで…
そっか、そうだよな、確かに他人事だ…考え過ぎだな…なんて言いながら、周りの少し引いたような雰囲気を感じ取って、ある意味同期に感謝しながらも、あの時は笑って…なんとか話を変えてはみたけど…
やっぱり現実は…
俺が想像していた通りだ…
いざ、当事者になると…
たまらない気持ちになる…
その立場になった者にしか絶対にわからない、感情だ…
そんな今…だからこそ、とにかく…
周りにはなるべく、バレないように…
密やかに…
いっそ俺を跡形もなく、消してほしい…
犯人特定などいらない…
かたき討ちなんて一切、不要だ…
ましてや、親には何の関係もない…
絶対に、年老いた親を追い詰めないで欲しい…
そんなことを考えてしまう俺の思考回路は、
既にどこかおかしくなってしまっているのかもしれない…
「おい…大丈夫か清春君…なんだかかわいそうだから、最後に…君の大好きな物思いに耽る時間を与えてやったが…さすがにそろそろ、時間だな… 」
男が小さな声で、ふふと
笑いながら呟いたのが聞こえた。
男が俺に一歩、近づく。
ゆっくりと、
もう一歩、近づく…
俺はゆっくりと、目を閉じる。
俺のこれまでの人生…
真由との出会い…そして結婚…
茉優子との出会い、その後の不倫…
そして、聞かされた真由と哲也の… そして、自殺未遂… …
色々あったが…
俺はやはり、自分が理想とする聖人君子には到底、なれなかった…
結果として、人間の欲に溺れ…
俺の存在が…俺の行動が…
二人の女を…
違う形の不幸に陥れたのだ…
確かに、
死ぬべきだ…
いつしか俺は、
自分自身で…
そう、思うようになった…
「さて…清春くん、最後の質問だ。
死に場所は、海がいい?
それとも山がいい?もしくは川か…?
もしくは、愛する女の近くか…何か希望はあるか…?」
「… は…?」
なんという、質問だ…
さすが… 哲也だ…
毎回、想像の…斜め上を行く…
答える力は、残っていなかったが、
「出来れば…苦しみたくない…」
俺がボソリと、本心を呟くと、
「承知したよ… だがそれは、俺がもともと考えていたことだから大丈夫だよ…俺も、君の苦しむ顔を、できれば見たくはないんだよ…」
そう、優しく笑って、
また、哲也が俺に一歩、
近づいた…
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