【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

疑い

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「さあ…準備は整った。真由のそれに目を通したか否かはともかく、俺は君に一応時間を与えた… そろそろ、いいな…」

俺は無言で、頷く。

不思議なことに… 
心の中は…奇妙なほどに、落ち着き始めていた。

今からこの男に、どんな風に殺められるのか…。

民間人による、死刑執行だ… 
公的機関ではなく、身内…
少し…いや、かなり頭のおかしな義理の兄に…俺は今から、殺される…。

ネットや映画などで耳にしたことがある、サイコパス…とも言えそうな…
本当のところ、男をそう呼んで良いのかもよくわからないし、その定義もよくわかっていないのだが…
哲也と接していて、不意に頭に深んだ横文字が、それだ…

サイコパス疑いの、哲也という人間に、俺は今から、殺される…

できるなら…楽に、死にたい…
長く…悶え苦しむのは嫌だな…

それと、茉優子や…特に、両親には、この事実を知られたくない…

他者に殺される…殺されたという事実だけは、知られたくないな…
絶対に、悲しませることがわかっている…
できるなら…突然、自分勝手にいなくなった…
何らかの事故に巻き込まれ、行方がわからなくなった…

そんな風に、思われたい…
        
そう…
まるで人ごとのように、そう、思った。

一人息子が殺害された場合…
年老いた両親にどれほどの心痛を与えることになるだろう…

仮に両親が…家の位置を特定されて…
こちらが殺害された被害者の両親の家だ…などと連日、マスコミに追われることになれば、あまりにも不憫だ… 

俺の会社での評判や私生活など、きっと全てを丸裸にされる…
下手をすれば、真由のことも…茉優子のことすらも…明るみに出そうだ。

現在の行き過ぎた報道に俺はいつも、憤りを覚えていた…

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