【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

伝言

だが、男の回答は、やはり、想像以上に冷たいものだった。

「はは…」男の乾いた笑い…。

「…そんなもの、駄目に決っているだろう…？なぜ、俺が君にそんな温情を与えてやらねばならない…？
そもそも君の携帯はここにはないし、このタイミングでそんな電話を彼女にさせることは、俺にとってあまりにリスキーすぎる…諦めろ。まあ、君の気持ちはわからなくもないがね…茉優子にこれから起こりうること…それらを予想しての謝罪なんだろう？」

「　…　っ　…　」
やはり駄目か…　無理だとは…思っていたが…やはり、叶わない…
俺は唇を強く噛み締める…

「ただし…そうだな…一つだけ方法がある…録音はどうだ…君の声を俺の携帯に…それを茉優子に特別に聞かせてやってもいい…いつか、ほとぼりが冷めた頃に…きみからの伝言だと、茉優子に伝えてやろう…」

録音…　

これまでの経緯もある…
ある意味、かなり疑わしい提案だ…
しかも、男が茉優子に接触することが前提なのも…本当はいまだに、認めたくは、ない……

だが…　何もしないよりは… …　

男が本当に実行してくれるかは実際のところ知る由もないが、せめて、希望を持ちたい…出来ることはしておきたい…

俺はそう願って、哲也の携帯に、一言だけ…謝罪の言葉を残した。

『　…　…　…　…　…　…　』

「ふふ… どこまでも真面目な男、…だな…」男が笑う。

「本当に、見事に謝罪のみ、だが…本当にそれだけでいいのか…愛の、言葉は…？」

哲也はニヤリと笑って揶揄うように俺にそう促したが、俺は首を振る。

もはや…　

そんな言葉を、茉優子に対して語る資格がない…　
これで思い残すことはそれほどない。　

　　　　　　そう、
　　　　　　　　思った。