【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

願い

「お願いだ…　」

「…やっと、声を発したな…安心したよ…
それで、お願いとは…？」

哲也を見上げる。
涼しい顔をした美形…男が楽しそうに笑って、俺を見下ろしている。

背も高く、普通にしていればどれほどにモテたのだろうかと、こんな時になってそんな…どうでも良いことを、考えてしまう。

「なんだ…？呆けたような顔で俺を見て…今更、助けてくれって言うのは無しだよ…いや、それはなさそうだな…君の性格からすると…そもそもそんなお願いは無理だけどね、最初から…」

「…最後に、茉優子と、少しだけ、話をさせてくれないか…」

「…　ほう　…」
男が顎に、ゆっくりと手を向かわせる…。
　
「おまえの話は一切しない…今からされようとしていることも神に誓って、絶対に言わない。だけど、一言だけ、ただ…　」

「ただ…　…　なんだ…？
最後に、愛の言葉でも伝えるつもりか…？もう、貴様には未来すら、ないのに…」

「違う…ただ、謝りたい…だけだ…」

「謝る…　…　？」

「ああ…一言だけでいい…　茉優子に謝らせて欲しい…」

俺は男に、ただそれだけを願った。

これから茉優子に襲いかかるであろう、不幸、悲劇…全てについて…

哲也のこれまでの口ぶりから、恐らく…いや、間違いなく…
哲也は今後、茉優子に近付き、全ての手持ちのカードを駆使して、彼女を脅迫し…彼女を男の力で組み伏せ、間違いなく無理矢理に、モノにするだろう…

彼女はその時、泣くだろうか…
助けを求めて、俺の名前を…それとも、夫の名前を…呼ぶだろうか…　

運悪く、俺のこと、哲也のことがDV旦那にバレて、更に激しいセックス を強いられ、暴力を振るわれるようなこともあるかもしれない…

たまらない… 

だが…
　　　俺にはもはや、守る術もない。　　

茉優子が押し倒され、その服を無理矢理に脱がされ、この残忍な、蛇のような男に無理矢理その身体を開かされ、男の凶器それで貫かれ… 汚されてしまう姿を…想像しただけで、虫唾が走る…　…

ごめん…　ごめん…

茉優子にとっては今の段階では意味のわからない謝罪になるかもしれないが、死ぬ前に、その一言だけでも伝えておきたい…

　　　　　俺はそう…願った。