【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

情愛

まだ、推測だが…

違う…この声は茉優子ではない…
茉優子とはどこか、イントネーションが違う…

敬語でも、ない…　　
茉優子は少なくとも今まで…俺の前では、こんな…甘えたような話し方を…したことなど、ない…

どういう…　

　　　　ことだ…　　　この声は…

　　　　　　誰の…　　
　　　　　　　　声　　…　　

「なぜ…駄目なんだ…　ほら…もっとこっちに、おいで…」

男の声も…　
これはもちろん断言できるが、当然…俺ではない…　

いくら小さな声でもさすがに、自分の声じゃないことくらいはわかる…　　


俺は呆然とする…

なんなんだ…これは…
一体…俺は…
何を…聞かされているんだ…

男が録音した男女の情事とは…茉優子と俺の…情事ではない…のか…

話の流れで、てっきり…
俺と茉優子の行為の様子を盗聴したものを聞かされると、思いこんでいた…

だからこそ、緊張していたし、心から、拒んでいたのだが…

そもそも…　

　　　　　この…　声…　は…　

「あっ…　ん、やめ…てっ…恥ずかし…　や　だ、こんな場所…でっ…　駄目っ… 」

「なんだ、場所の問題…なのか…　？じゃあ…ベッドに移動しようか　… おいで…」

男がそう話した後、クスリと、笑う…　

その声に…なぜだか恐ろしいほどの…女に対する情愛の念を感じる…

聞いたことがあるような…優しい、声音…


　　　まさか　　…　　　この声…
　
　　　この、男の声は…　まさか…　


俺は全身の血が一気に…
冷えて…段々と凍り始めるのを、感じる…　　

　　　　　　　これは…　
　今…俺の目の前にいる男の、声では…

　そして…

　　　この、甘ったるい女の声は…


　　　　　　　まさか…