【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

器

そんなものを…　　
　　　真由が、残して…   いた…  ？

真由が、自殺の当日に記した手紙…
それは…
それこそが、まさに…遺書に…あたるのではないか…？

俺の頭に一番に浮かんだこと｡

　　　　　　　　
　　　　　　　　　なぜだ…

なぜ、今まで…  この男は
その事実を俺に隠していた…？
警察などにも…当然申告されていない情報…

なぜ…   
なぜ、おまえが勝手に、それを…
その情報を、握っていた　…？

その手紙を…
真由が最後に残したと思われる手紙を…なぜ、今…俺ではなく、おまえが… 手にしているのだ…

いつ…  いつだ…  いつ、見つけた…？

いつ、入手…したんだ…
まさかとは思うが、警察や…俺が…家に駆けつけるより前に、真由の部屋の中を勝手に物色したとでも、言うのか…？

所詮、哲也は、兄だ…

夫である俺を差し置いて… 
ただ、真由と仲の良い兄…というだけで…
なぜ、そんなことを勝手に…

そうだ…

　　男はさっき、

　　　　　　手帳と、言った。

　　
まさか、
俺がこの前、真由の部屋で見つけた手帳達の中に…
あれらの手帳の、どこかのページに…
記されていたのか…  ？

前に見た際は、全く気付かなかった…
既に、男に抜き去られた後…だったのか…？
それとも、俺の見落としか…

いずれにしろ…

曲がりなりにも…真由の夫である俺に…

こんなに日が経った後で…
そんな大事なものを、差し出してきた哲也に　
心から、憤りを覚える…

いつ、見つけた… …  ？
今日のように、俺の知らぬ間に忍び込んで、たとえばつい先日、見つけたのなら…まだ…許せるが… 

もし、あの夜…
既に…男がそれを持ち帰っていたとしたら… 
到底、許せるものではない…

遺書だぞ…   
何よりも優先して、すぐに知らせるべき代物ではないか… 
　　　　　　
俺は、ギリギリと唇を噛み締める…

手紙の内容より先に、
そんなことを気にする俺は…
　　　　器が小さいのだろうか…

　　俺は心から困惑しながら、

　　　　　　哲也を見上げた…