【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

二つ目

「二つ目の話…それは、真由についてだ…」

「… … …」

「真由はあの通り、ずっと病院に眠ったままの状態だ… 話すこともできず… あの大きくて可愛らしいキラキラした目を見ることもできない… 真由の高い声も…頭を撫でたときに猫のようにじゃれてくる姿も… もう、… 今となっては… …。そしてこれからも… 真由が今までと同じように生活できるとは、限らない…というか、もう…恐らく、無理だろう…」

「…  はい… 」

真由の現状は… 哲也の言う通りだ…

医者の話が…段々、希望のないものに移り変わり始めている…
まだ、断定的なことを言われたわけではないが…もう…
恐らく、もう真由は…  …  戻ってはこない…

哲也の呟きに…俺には何一つ返答が出来ない…  

「真由が自殺を図った原因…  君にはわかるかい…？」

それは…きっと、
俺と… 茉優子の不倫の事実を知って、それを憂いて…

だが、本当にそれだけだろうか…
それだけで… 果たして、あの明るかった真由が… 自分の命を自ら、粗末にするような、自殺…そんな方法を選ぶだろうか…

真由の性格であれば…もし、疑いを持てば、 俺にまず真っ直ぐに聞いてきたり…嫌なことは嫌と言ったり…とにかく、はっきり思ったことは口に出す…

真由は、そんな真っ直ぐな性格だと、少なくとも俺はそう…認識していた。
だが、実際は何ひとつ打ち明けられたり、問いただされることはなかった。

あの日も、少し元気はなかったものの、俺に弁当を持たせ、普通に行ってらっしゃいと俺を仕事に送った後…  
そのまま… その夜に…　真由は薬を…
　　　　　
しかも最悪なことに…
俺はその夜、茉優子と狂おしく､抱き合っていた… 

哲也からの連絡に気付くまで…ずっと…
彼女から身体を離すことすら耐え難く…
一つになったままの温かさ…心地よさに溺れ…俺は彼女を幾度も貫き続けた…。

それほどに、激しく愛し抜いた夜に…
真由が、自殺を…

　　　　まさかと、思った…


少し前まで元気に見えた、もとは明るい人間が…妻が、突如、死を選ぶ…

　　自殺…　　

　　　すぐには信じられない…

　　　　信じたくもない…

それを選んだ人間の苦悩はもちろん計り知れないが…   
残された人間…　家族の… 絶望感は…　　また、別の次元でずっと…　
　
「清春君、君にわかるか…原因が…？」
再び、追い打ちをかけられるかのように哲也に尋ねられる。

今、考えられる最大の理由…

「それは… 俺と彼女のことを知って… 」
「そうだ…もちろん、それもある…だがね…  それだけではない…」
哲也が答える。
「　…     は　… ？」

哲也が…それだけはない…と、断言した…

なぜだ…
　　なぜ、そんな風に断言できる…？