【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

対峙

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この男には…
果たして、自覚はあるのだろうか…

綺麗で整った顔をしているが、
時折…恐ろしい獣のような鋭い目つきで…
人を…俺を、見下ろしていることに…

危険な眼だ… 
 このまま、普通に合わせてはいられない…

俺は恐怖を感じ、
    再び哲也から目を逸らす。

「ん… なんだ… おかしな顔をして…せっかく口を自由にしてやったんだ…言いたい事があるなら言え…ただし、音量は下げて…さっきのように喚いたら、たたじゃおかない…」
哲也が立ったまま、冷え切った目で俺を見下ろす。

俺は気持ちを奮い立たせて、なんとか口を開く…
「あの…彼女には… …  し、…  しないでもらえない、か… 」

「…は… なんだ…?全然…聞こえないぞ…」

哲也がわざとらしく、耳元に手を当てる…

やはり、小馬鹿にされているようで嫌な気持ちになるが、もはやそんなことはどうでもいい…俺はもう少しだけ、音量を上げる。

「彼女には、手出し…しないでくれ… 」

「…  はあ…!?」
哲也が耳に手を当てたまま、さらに少し、大きな声で聞き返す。
今のはさすがに聞こえたはずだ…
このリアクションは…絶対、わざとだ…

俺は負けじと、言葉を繰り返す。

「彼女には、手出し…しないで欲しい…彼女は全く関係ない…そもそも最初は俺が誘って始まった関係だ…全面的に俺が悪いので…彼女のことはそっとしておいて欲しい…お願いです。彼女にはその…旦那さんもいますし… 」

語尾が、図らずも敬語に戻ってしまった…
俺は、自分自身の弱さに、辟易する… …

だが、もはや、この男に対して、強気にはなれない…

      「…  ほう…」

哲也が、何故だか楽しそうに、笑う…  
相変わらず、奇妙な男だ…
次に何を言われるのか、想像もつかない。

耳からおもむろに手を離し、今度は腕を組んで哲也が俺の目を、真っ直ぐに見つめる。

ゾクリとしたが、俺も…今は目を背けるわけにはいかない… 
今の段階で俺のいない未来を考える時点で俺もどうかし始めているとわかってはいるが、
俺がいないところで、茉優子が他の男に…

よりにもよって哲也に、組み敷かれるなど… 到底、見過ごすことはできない…
茉優子がどれほど酷い目に遭うのか、想像するだけで恐ろしい…  
それほどに、哲也は…
狡猾で抜け目のない…恐ろしい男なのだ…

俺が、このまま…
信じたくもないが、もしも…このまま、俺が駄目だったとしても…

茉優子だけは…なんとか…

この蛇のような執拗な男から解放したい…なんとか…

  その時の俺は…その一心で…

     哲也と対峙していた。
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