【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

対岸

目を凝らしても、何も見えない
ここがどこなのかもわからない
叫ぶことも…身動きすら、できない。

この状況で…今の俺に何ができる…。
手足を縛られ、どこにも逃げられない…

俺は…今、絶対的に…　あの男の　手中にある…

あの男が俺を消すというなら…　
今のこの状況は、あまりにまずい。

口だけで殺すと…そう、言われたなら、まだ…焦りはしないがさすがに、この完全なる実力行使…　
このまま、やり過ぎた、ごめんな…などとあの男が俺に謝ってくるとも思えない…

やはり、冗談ではなく、本気…？

ドラマや映画ではあるまいし、人が人を殺める…
そんなことが…　普通に、あってたまるか…

殺人などの事件は日々のニュースで報道されてはいるが、それは、関係のない人間にとっては自分の生活とはかけ離れた話で、自身の日常生活になんら影響を及ぼさない…対岸の火事…
いくら、悲惨な事件に巻き込まれた不運な人間がいたとしても、それは自分の家族や身近な存在でない限り、日が経つにつれ、いつしか忘れられていく…

かわいそうだ、不運だ……
殺人などの不幸なニュースに対し、被害者はこうしていれば免れたかもしれない…警察が介入しておけば…など、ああすれば良かった、こうすれば良かったなど、その事件をもしかしたら回避できたかもしれない数多くのコメントがネット上に溢れたとしても、全く意味をなさない…。
起こってしまえば、終わりなのだ…所詮、結果論でしかない…。

本当に心を痛めている家族、身内からしたら、自身の事件のコメント欄を確認する…そんな、心の余裕すらない…　
きっと、それどころでなはい…何かに目を通す気持ちにすらならない…
目の前の不幸に支配され、もはや、絶望…　

　　　　　　　先は真っ暗だろう