【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

抵抗

「どうした…？だまりこくって…ふふ」
哲也が何か言っている…

「う…、嘘だ…そんなはずは… 」
俺は、自分自身に言い聞かせるように、もう一度そんな言葉を繰り返す。

真由が、本当はあの夜、起きていて…この男のキスに応じた…だと…
胸さえも、揉ませて…　抵抗せずに…　？

いや、ありえない…そんなはずは…　　
　　　　　　　　俺の頭の中は、混乱状態に陥る。


「…　君は…　本当に、…」

哲也が何か言いかけようとする…　
もう…本当は何も聞きたくない…が、もはや、こんなことを聞かされて、続きを聞かないわけにもいかない…

「君はなんだか、本当に…可哀想な男だな…　」哲也が呟く。

「は…　…？」

なぜ…俺がこんな男に…可哀そうなどと、言われなければならない…
思わず口を開こうとすると、

「君は一体、真由の何を見ていた…？真由がこんなことになるまで、気付かないとは…いや…ある意味、今も気付いていないのか…　はあ…　説明が必要、か…」

「…　どういう、意味だ…　」

なんとか言葉を繰り出しながらも…
俺の脳は…さっき、哲也が言ったことは…全てデタラメかもしれないと思うように作動し始めていた。

先ほど男は、俺のことを、人を信じすぎると表現した…
確かにそうなのかもしれない…
現に今まさに…俺は哲也の話全てを、信じそうになっているからだ…
だからこその、抵抗…　このままこの男の話を鵜呑みにするわけにはいかない…
抵抗、せねば…。　　

物証があるわけでもないし、この男の話す内容が、真実とは限らない…
なにしろ、真由はベッドに横たわったまま…　
真由が何も話せない以上…この男の話を信じるのは、あまりに馬鹿で…滑稽すぎる。

俺は自分を再び奮い立たせ、真っすぐに哲也を見返して、口を開いた。