【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

仕草

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俺は哲也の声音から不穏な空気を感じ取り…すぐさま、断言口調に言い換える。

「いえ…しました、俺は不倫しました…」

「癇に障る男だ…何が、してしまいました、だ… … うっかり魔が差してしまったような言い方をするな…
自らの伴侶を裏切る行為だ…そんな言い方が通用すると思うか…?君は明確な意思を持って、真由以外の女を、その腕に抱いたんだろう… 」

      …  チッ…  …

男が最後に、静かに舌打ちをしたのが聞こえた。

舌打ち…  

       哲也が…

それは、俺の知る限り、哲也が初めて俺の前で見せた仕草だった…  
俺は内心、動揺する…

奇妙な男だが…

いつも物言いや仕草だけは丁寧で…それが逆に不気味だったのだ…
普段は間違ってもそんなことをしない哲也が、今、俺の前であからさまに、舌打ち…

確実に、俺自身の発言が男を苛つかせているのがわかり…俺の鼓動は更に早くなる。

「君は、誰のせいでもない…
自分の意思で…あくまで自分の選択で、あの女と不倫した…妻である真由を裏切ったんだ…何が、して、しまいました、だ…」

視界の端で…
哲也が俺に鋭い視線を向けているのがわかり、 恐怖する…  

またも、俺はこんな場面で…
     言葉選びを間違った。

哲也は続ける。
「間違っても、人や…自身の環境のせいにするな…まさかとは思うが、真由のせいにするつもりか…?
君が悪いに決まっている…君とは、もはや話す価値もないかな…なんなら今すぐ…君の息の根を止めてやろうか…?」哲也の視線が俺の横顔に突き刺さる…。

息の根を止めてやるなどと…そんなことを冗談でも人に言われたことはない…
そもそも哲也は、冗談など言うのだろうか…

もはや、恐怖で目を合わせることすらできない。

だが、哲也は正しい…そうだ… 決して、真由のせいではない…

    俺は自分の意思で

 真由を裏切った…それも一度ではない…

      何度も…
  
    そして、真由が倒れた後も… 

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