【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

出現

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 溜息… … ? 

なんだ…今の声… は…

    「 … っ… 」まさ…か… 

あまりに驚き過ぎて、咄嗟に声が出ない… ここは俺の家…?だぞ… 

    「… ふっ… …」

意味をなさない音… まるで空気銃のような音だけが自分の口から漏れ出る。

「 … な、… 」恐る恐る、声のした方…背後を振り返ろうとすると、

俺の耳たぶに息がかかるくらいの近距離で、聞きなれた…男の低い声が、聞こえてくる…。

「まだ、振り向くな…いいな…」

「は…  は、… …」
無様なことだが…俺はまだ、まともな言語を生み出せないでいた。

それほどに、衝撃的な… 予想もしない場所での、男の、出現…

珈琲カップを持つ手がぶるぶると震え始める… 

      何が、  起こった… 

なぜ、男がここにいる… ?

ここは俺と、真由の家… なぜ、男がここに…もしかして、俺は夢を見ているのか…?

頭が混乱して、何も考えられない…

「どうした…?清春君…自宅に帰って来てからずっと…君は、ため息ばかりだな…」

なぜだ…  不思議なほどに平然と…淡々と、話す、男…

  
男が、なぜ… この男が、なぜ… 俺の家に…今、 ここに…?

病院には行かずに、なぜ、ここに…?     

真由と、俺の…俺たちの部屋…リビングに…なぜ… ?どうやって入った…?

   いつから…? どうやって…   

身体の奥の方からゾクゾクと… 
    得体も知れない、恐怖に似た感情が、せり上がってくる…
          
        
 そう、か…

まさか、鍵…?合鍵を持って、いる… とか…

ひょっとして前から…持っていた、のか…?

いや、まさか…
だって、真由は…そんなことを、ひとことも、俺には言わなかった… 

だが、もしかすると…渡していたのか…?

真由が、勝手に…
俺たちが結婚して二人だけで住むこのマンションの合鍵を、勝手に…?男に…

そんな…こと、ありえ、ない…  
真由なら確実に、俺に一度は聞いて…そうだ…必ず、一度は伺いを立てるはずだ…

俺の知ってる、真由であれば… さすがに…いくら兄弟であっても…
互いの夫や、妻に無断で… 相手の承諾なしに…
自宅の合鍵を、近しい親族に…兄に、渡す…なんてことは…絶対にないと、信じたい…。 
 
なのに、なんだこの状況は…なぜ… 

    どうして…  

      
温かな珈琲の味は瞬時に、消し飛び…
      
俺の背中に、
冷や汗のようなものが、伝い始めていた…

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