【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

もや

「真由…」

俺は真由のそばに近寄る。

青白い肌色…
白い服から伸びる、細く華奢な手足…
倒れて病院に運ばれてから更により一層、痩せてしまったような気がする…

点滴をされている方の腕の表面に細く青白い血管がいくつか湧き上がり、痛々しいとしか表現のしようがない…

固く閉じられたままの瞳…

大きくて綺麗だった真由の瞳は…
もしかしたらこのまま… 一生…開かれないままなのかもしれない…

救急で運ばれ、それからもう…正直何日経っているのかわからなくなってきているが、もう随分長いこと、真由は目を覚まさないままだ…

心臓は動いているというのに、あれから一度も…全く、意識が戻らない…
最近は医者も、希望のある話をほとんどしてくれなくなった…これが、意味するもの…

真由は…  
ひょっとして、　もう…    ？　
　　　　　　　駄目なのか…   　　
　
いや、まだ…  きっと…

　　　　  希望は…  あるはずだ…

時間はかかるかもしれないが、この先…奇跡みたいなことだって、起こるかもしれない…  

現実はそう、甘くはないのに…
わかっては、いるのに…

その一方で、俺の頭は、どうやったって現実逃避をするかのような思考を続けてしまう…自覚はあるのだが、自分では止めようもない…ほぼ無理矢理な、楽観的思考回路
なんとかこの事態で平静を保とうと、自身の
脳が働きかけているのかもしれない…

　
　　　　　　真由…  

俺はさらに一歩、近付き、
　真由の手に、そっと自身の手を乗せる…

温かい…
ちゃんと…こうして、
真由の体にはまだ、命が…
血が、通っているのだ…  そうだ… 命… 
　　
なんだろう… 
　　何か、おかしな違和感を覚える…

なぜか、思い出せない…   

夢で見たのか… 現実か…      生命の力…  
真由はちゃんと生きて、いた… 今も… 生きて…    でも… なんだろう…

　　　　 何かが、 引っかかる…

得体の知れない何かが… 
俺の脳内に、ぼやんと、白い霞のようなものをふりかける　…  視界が… 閉ざされる…

思い出せない…     だめだ… 

　　思い出すことを諦め、ゆっくりと

　　　　　真由を見下ろすと

　あの日のことが昨日のことのように

　　　　俺の脳内を埋め尽くした。