【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

真由

「あっ…  ん　…」

あの声は…そうだ…

間違いなく、真由…真由のものだ…

俺が昔付き合っていた恋人たちのうちの一人ではない…

茉優子でも、ない…
茉優子の声は…たとえたかぶっていたとしても あんな風に、鼻にかかってはいない… 

　　　　　　真由　…   …  

おまえまで、なぜ… 俺の無意識下に…
俺の夢の中に、得体の知れない相手とそんな淫らな行為をしつつ…出現してくるのか…  

まさかとは思うが、
俺の潜在意識の中に…自分の不倫相手を…いや、不倫相手に限らず妻でさえも…
他の男と交わらせたい…そして、その二人の
姿を…その声を…見たい…聞きたいなどと…
そんなおかしな期待が、あるとでも…？

まさか…あり得ない…

随分昔に、何かの深夜番組でたまたま観て、驚愕したのを覚えている…世の中に、確かにそんな男…女がいるらしい…

自分の身近な存在…彼氏、彼女などを他の相手と…そんな状態に置き…そして時には自身も加わり…自らを興奮させる、などと…そんなおかしな欲望…いや、もはや性癖とっていい…そんな願望がある人間がいるとか、いないとか…  

まさか俺の潜在意識にそれが…そんな欲望があるとでも…？

いや…考えれば考えるほど、あり得ない…

自分の好きな…自分が愛している相手が…他の人間と抱き合うことに興奮するなど、あり得ない…
仮にそういうことができるのであれば…つまり、自身の恋人が他の人間の餌食になることを傍観できるのであれば…もはや、その程度の相手でしかないのでは、とさえ思う…

俺なら、許せない…
むしろ、覆い被さる相手を女の上からただちに引き剥がし…殴り倒したいくらいだ…

「ああっ… ん、もうやっ… め… それ以上は… あっ… ん…」

真由に似た声に、ハッとする…
白いモヤの中…まだ、相手の男は真由らしき女を離さないようだ…

 一体、なんだというのだ…

俺の脳内…俺の意識の中に…茉優子と真由が…おかしな形で現れる…
そもそも真由の相手は…誰だ…   

　　　　　　　　
　　　　　　　　まさか… 


いや、ますます、あり得ない…
もう駄目だ。
もはやまともな夢とはいえない…たとえ、現実ではなくても…もう、こんな光景に1分でも接していたくは、ない……
俺は夢から覚めたいとばかりに、

　　　　ぎゅっと目を閉じた…。