【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

社交辞令

俺は携帯にメッセージを打ち込む。

『こんにちは、茉優子さん…この前はどうも。お時間は大丈夫でしたか？楽しかったです、またぜひ、食事に行きましょう』

何が食事に行きましょう、だ…
社交辞令も、甚だしい…

最初はお茶を飲むだけでもいいと思っていた…会って、少し話をするだけでも…

だが食事をして…いつも通り柔らかな表情で微笑み、色香を漂わせる茉優子を目にして…
鈴の音のように可愛らしい茉優子の声を、耳にして…
長いまつ毛が縁取る綺麗な瞳に見つめられて… 
白い頬を…小さな紅い唇を直接…目の前にして…

全く、抑えが効かなくなってしまった…

自分自身が、信じられない…

個室とはいえ、そういうことをして良いはずのない食事の場所で…
茉優子を抱き寄せてキスをするなど…今までの俺には考えられないほど大胆で破廉恥な行為… 

　　　　なんで、あんなことを…

会えない期間が長過ぎたといえば、長過ぎた…確かに、そうかも知れない…
だが、一月は、あいていない…

そして…本当はあんなこと…  …を …

店でのキスはもちろん… その後のあの行為…セックスなど…してよいわけは、絶対にない…はずの時期…

何がなんでも我慢して、理性を保つべき時期…だったはずが… 俺はあっけなく…自分自身に敗北し…自身を解放してしまった…

俺の理性は、茉優子を前にすると…一瞬で崩壊してしまう… 理性より欲望が勝ってしまう…

　　　いつも…     いつも、だ…  

今だって… 連絡だけだと自分自身に言い聞かせながら本当は…茉優子に何を求めているんだ…

本当に連絡だけか…
文章だけで満足か…
声だけ、聞くことができればいいのか…
そうだ…いっそ、茉優子の写真か何かを…送って貰えば、いいのか…
　　
　　　　　　
　　　　　　いや、違う…