【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

狡猾

努力なく上にのし上がっていく者は、自分より立場が上の者には媚びへつらい、下には気分に任せて自分の仕事の一部をも言葉巧みに振り分けた挙句、自身は平気で定時に帰り、部下職員の残業は気にもとめないような、そんなタイプだ…

つまり、立ち回りが上手く、要領の良い人間…俺は会社でそんな人間を…そんな上司を、たくさん見てきた。

この社会は不思議なことに…
いや、言葉が適切でないな…
この社会は理不尽なことに…
そんな、仕事はともかくも人として軽蔑に値する人間が、意外にも出世の階段を器用にかけのぼっていく…

周りは見て見ぬふりだ…

被害者には誰も手を差し伸べない…
そもそも自分が生き延びるのに必死で、そんな余裕すらないのかもしれない…

心が優しく人を疑わないような真っ直ぐな人間が…ある意味で要領の良い狡猾な人間の土台に成り果てて…
気付けば、蹴落とされている… …

この会社が…いや、
この現代社会の構図が…そのように、俺の目に映ってしまう……
もはや今の俺には、そうとしか思えないのだ…