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清春編
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この男は真由に、
公然と何を…するんだ…
今まさに…俺がこの前の異様な行為について問いただそうとしていたこの時に… 何を…
急激に…頭に、血がのぼっていく感覚…
「… … 」
すぐに言葉が出てこない自分に、無性に腹が立つ。
この男は堂々と…
俺も看護師も、いる前で… 真由に
哲也が今まさに気付いたように、ゆっくりとこちらを振り返る。
看護師は驚きの表情を隠せない。
『あの…』
俺と看護師の声が、奇妙に重なる。
「ああ…失礼…人がいたんだった。俺は外国にしばらくいたことがあるので、ついその頃の習性が出てしまった…それにしても恥ずかしいな…変なところを見せました。真由にも怒られそうだ…では清春くん、あとはよろしく頼む。」
哲也はそう言って、微笑む…
およそ、この場所に似つかわしくない爽やかな、表情で…
「…そう…でしたか、あの、すみません、急かしてしまったみたいで…」
哲也の言葉に、看護師があからさまにほっとしたような表情で、再び言葉を続ける。
「いえ全然。こちらが完全に悪いので…じゃあおやすみ、清春くん。」
「… … 」
俺の返事を待つまでもなく…
気付けば哲也は、病室から…霧のように消えていた。
シンとした廊下に
哲也の靴の足音とナースサンダルの足音が…ザッザッ… パタパタと、
奇妙に重なり響き合いながら…したかと思うと、
徐々に、俺の耳から遠ざかっていく…
哲也に、逃げられた。
その時はそう、思った。
だが本当は…そうでなかったことに、俺は少し後に、気付くことになる。
哲也は、
俺から逃げる気など、なかったのだ…
むしろ、この俺が、逃げるべきだった…
ただ、それだけのことに早い段階で気付けていればどんなによかっただろう…
今となってはもはや、
後の祭りに、違いなかった
公然と何を…するんだ…
今まさに…俺がこの前の異様な行為について問いただそうとしていたこの時に… 何を…
急激に…頭に、血がのぼっていく感覚…
「… … 」
すぐに言葉が出てこない自分に、無性に腹が立つ。
この男は堂々と…
俺も看護師も、いる前で… 真由に
哲也が今まさに気付いたように、ゆっくりとこちらを振り返る。
看護師は驚きの表情を隠せない。
『あの…』
俺と看護師の声が、奇妙に重なる。
「ああ…失礼…人がいたんだった。俺は外国にしばらくいたことがあるので、ついその頃の習性が出てしまった…それにしても恥ずかしいな…変なところを見せました。真由にも怒られそうだ…では清春くん、あとはよろしく頼む。」
哲也はそう言って、微笑む…
およそ、この場所に似つかわしくない爽やかな、表情で…
「…そう…でしたか、あの、すみません、急かしてしまったみたいで…」
哲也の言葉に、看護師があからさまにほっとしたような表情で、再び言葉を続ける。
「いえ全然。こちらが完全に悪いので…じゃあおやすみ、清春くん。」
「… … 」
俺の返事を待つまでもなく…
気付けば哲也は、病室から…霧のように消えていた。
シンとした廊下に
哲也の靴の足音とナースサンダルの足音が…ザッザッ… パタパタと、
奇妙に重なり響き合いながら…したかと思うと、
徐々に、俺の耳から遠ざかっていく…
哲也に、逃げられた。
その時はそう、思った。
だが本当は…そうでなかったことに、俺は少し後に、気付くことになる。
哲也は、
俺から逃げる気など、なかったのだ…
むしろ、この俺が、逃げるべきだった…
ただ、それだけのことに早い段階で気付けていればどんなによかっただろう…
今となってはもはや、
後の祭りに、違いなかった
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