【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

善か悪か

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茉優子もきっと…俺と同じだ。
そんな気がしてならない。

茉優子は家庭の話をあまりしたがらなかったが、仕事の話はたびたび口にしていた。

結構な激務で、定時に帰るために時間中雑談やお茶を飲むなどほとんどせず、ものすごく集中的に仕事に取り組むようなことを以前…言っていた気がする。

今も管理職ではないが、何か企画のリーダーを任されていて、時間が足らず…夜もたまに、自宅でパソコンを触らざるをえないとか…

茉優子のあの性格だ…
きっと色々、断れないのだろう。

頼まれた仕事を、自分の仕事じゃないとキッパリ断ることができる人間もいれば…

俺と茉優子のように、ハッキリと断ることができずに結果的に自分の仕事が増えていき、自分の首を絞めてしまう人間…

会社には…
いや、この社会には色々な人間がいる…

善良な人間を甘い言葉であやつり、平気で騙す者…
人を踏み台にして上にのし上がっていく者…
道端で転んだ老人を無視して立ち去るのか、駆け寄って手を差し伸べるのか…

本当に色々だ…

    
天ぷら蕎麦を食べた時に、同期にこうも言われた。

お前は根っからの性善説、だな…
そんなんじゃ、このストレス社会を生きていけないぞ?
俺は基本、性悪説に立つから…しっかり人を見極めて、これからも逞しく、ずる賢く生き抜く予定だよ…  と。

    俺が、性善説… ?

これまで一度も考えてもみなかったが、そんな風に言われてみて初めて気付いた…   

確かに、そうなのかもしれない…
あるいはそう…信じたいのかもしれない…  

人は、皆、善なのだと、思いたい…

俺自身は、
およそ、困った人を助けないではいられない…見て見ないふりをしてその場を立ち去ることができない。
もはや、体が勝手に動いている…そんな感じだ。

だが、そんな自分の性格は嫌ではない…
でもやはり、損な性格ではあるな…
それも十分に、自覚している…

ああ…今は、真由もいない…

一人きりな上に仕事がないから、やたらと、考えても仕方のないことを考える時間があり過ぎて困る…

ああ…真由はいつ、目を覚ますのか…
覚まさないなんてことは、絶対…現実にはないと、信じたい…  

ああ… 
茉優子はどうしているだろうか…

俺はこんな時にまで、茉優子を思い出すのか…   連絡してみようか…  いや、今はまだ…   駄目だ…

俺は自分を、意図的に抑制しながら

  ソファにだらんと、

       体を預けた。





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