【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

哲也の

哲也は珈琲を一口飲んで、ことりとテーブルに置く。

「まず、清春君…君は真由が自殺を図ったことに心当たりはないと言ったが、それは本当かい…？」

哲也の視線が、正面に座る俺を真っ直ぐに…まるで射抜くように、注がれる…

哲也は笑っていないだけ…無表情なだけなのだが、なまじ整った顔立ちをしているせいか氷のように冷たい表情に見えてしまう。

「は…はい…あの、昨日の朝あまり眠れなかったとは言っていましたが…特に何かに悩んでいるふうには、見えませんでした…」

そう答えながらも、俺の心臓はバクバクとうるさいくらいの音を立てていた…。

答えを、絶対に間違えるな…
動揺して、おかしな返答をするな…
普通に…あくまで冷静に、振る舞え…
この兄の…哲也の威圧感に負けて慌てて答えたりすれば、すぐにボロが出てしまいそうだ…

まだ、哲也の口からは茉優子のことに…俺の不倫のことには一切触れていないのだから… 

まだ…わからない…

哲也がそんな話題を振ってくるまでは、こちらからは何も言わずにただ淡々と、接するのが正解だ…

俺は頭の中で、数々の防御の言葉を組み合わせ、作り出しながら、哲也の次の言葉を待つ…

「そう、昨日も言っていたね…でも実は真由は長いこと悩んでいたんだ… それは、何だと思うかい…？」

「は… …        えっ　…と… 」

質問形式…

なんと答えるべきなのか…
いや、そもそも…
　　　
　　答える必要性があるのか…  …