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清春編
囁き
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哲也が口を開く。
「清春君。さっきから、君は百面相のように表情を変化させている…何を考えている?
俺は…あまりの事態に思考がストップしている状態…だがな… ああ…真由… 」
哲也は両手を祈るようにしながら握り合わせ、俺の方を見る。
ギラリとした視線が、なぜか恐ろしい…
不意に、哲也が真由に触れていたシーンを思い出し、ゾッとする…
哲也に会うのはあれ以来で…
結局、これまであの恐ろしい光景について、哲也に問い詰めることが出来ずにいたのだ…
半分血のつながった妹、真由に…キスをして…おまけに胸を揉むなど…どう言うつもりだと、夫として毅然とした態度で問い詰めねばと…思っていたのに…
今はもう…この状況下ではとても無理だ…
そもそも、茉優子と不倫関係にある俺が… 正々堂々と人に…哲也に…真由の夫としてまっとうな意見などできるのか…
ああ… もう、わけがわからない…
何もかもが、ぐちゃぐちゃだ…
「…清春君… 先生は最悪の事態もあり得ると、言っていた…もしも…もしも、真由にもしものことがあれば…俺は… … … …」
「… … え… …?」
語尾が小さ過ぎて、聞こえない…
何と言ったのか…囁くような声で…
「あの…」俺が尋ねようとすると、
「坂下さんのご家族の方…えっとご主人ですよね…ひとまず別室でお話、良いですか…お兄さんはまた、後ほど…」
真由がいるであろう処置室から出てきたさっきの医師が、神妙な面持ちで俺の前に立つ。
「わかりました…」
俺は立ち上がり、哲也を振り返る。
「いったん、失礼します…」
そう言うと、俺の声が聞こえなかったのか、哲也は下を向いたまま、
微動だに、しなかった。
「清春君。さっきから、君は百面相のように表情を変化させている…何を考えている?
俺は…あまりの事態に思考がストップしている状態…だがな… ああ…真由… 」
哲也は両手を祈るようにしながら握り合わせ、俺の方を見る。
ギラリとした視線が、なぜか恐ろしい…
不意に、哲也が真由に触れていたシーンを思い出し、ゾッとする…
哲也に会うのはあれ以来で…
結局、これまであの恐ろしい光景について、哲也に問い詰めることが出来ずにいたのだ…
半分血のつながった妹、真由に…キスをして…おまけに胸を揉むなど…どう言うつもりだと、夫として毅然とした態度で問い詰めねばと…思っていたのに…
今はもう…この状況下ではとても無理だ…
そもそも、茉優子と不倫関係にある俺が… 正々堂々と人に…哲也に…真由の夫としてまっとうな意見などできるのか…
ああ… もう、わけがわからない…
何もかもが、ぐちゃぐちゃだ…
「…清春君… 先生は最悪の事態もあり得ると、言っていた…もしも…もしも、真由にもしものことがあれば…俺は… … … …」
「… … え… …?」
語尾が小さ過ぎて、聞こえない…
何と言ったのか…囁くような声で…
「あの…」俺が尋ねようとすると、
「坂下さんのご家族の方…えっとご主人ですよね…ひとまず別室でお話、良いですか…お兄さんはまた、後ほど…」
真由がいるであろう処置室から出てきたさっきの医師が、神妙な面持ちで俺の前に立つ。
「わかりました…」
俺は立ち上がり、哲也を振り返る。
「いったん、失礼します…」
そう言うと、俺の声が聞こえなかったのか、哲也は下を向いたまま、
微動だに、しなかった。
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