【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

充電

だが、今の俺にとって、
その優しさは駄目だ…　その、物憂げな表情が、むしろ駄目なのだ…

もっと、一緒にいたくなる…　離れがたい…　人目を気にせず、今すぐ抱き締めたい…
どんなに身体が疲れていても…心が摩耗していても…　いや、疲れているからこそ余計に…
茉優子が、俺にとっての最大の癒しなのだ…

自宅では癒されない…　真由では、もはや無理なのだ…
遅くに帰って…やはり少しだらしない真由に対し、元気に笑って返事をする気力すら残っていない…。
ただ、家に帰り…仕事に行き…また、帰り…の、繰り返しだ…。
どうして、こんなにも…家が安らぎの場所でなくなったのだろう…
あの、乱れ過ぎた部屋と…　最大の理由は、あの男のことが…まだ、俺の頭のどこかに引っかかっているのかもしれない…。

そう言えばあの男…　あれ以来、家に来ていない…　
さすがにバツが悪かったのか…　もしくは、俺がいない間に、実は我が家に上がり込んでいるのか…
いや、今はもういい…　目の前の、茉優子のことだけを考えたい…

俺は茉優子の優しさにつけこみ、子供のように甘えた発言をする。
「…嫌です…まだ、帰りません…　食事をしてから…　あなたを抱き締めたい…そうしたら元気が出ます…」

「え…　…　…」茉優子はさっと顔を赤らめ…すぐに、無言でこくんと頷いた…。

その後、いつものホテルへ…二人、時間差で向かう…。

この時間が俺の…癒しの時間…　充電の時間、なのだ…
今の俺の心に…身体に絶対に必要なもの…　茉優子という、まるで聖母のような存在…　

俺は…段々と、そんな風に開き直って考えるようになった…