【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

努力

「ごめんね、本当に…もう大丈夫だから、またよろしくね…？」真由が呟く。

そもそも、真由は何故、家を出て行ったんだっけ…　

ああ、そうか…俺が泣かせたんだ…　あの夜…俺が駄目に…なってしまったから…
それで真由は自信を無くして、哲也の家に向かったに違いない…。　

だが…　　
いっそ今すぐ、真由に言ってみようか…

あの男は危険だと…　兄だからといって油断するな…　もうこれ以上、哲也に近寄るなと…
だが、真由は既に、哲也のもとに1週間近く滞在していたのだ…
今更言ってなんになる…

そうだ…さすがに、実の妹に手出しなど…するわけがない…　
あの時だって真由がぐっすり眠っていたから、哲也があのような行為に走っただけで…

そもそも真由は、俺と結婚している…　

あの夜のことに…今になって触れることもない…　
そもそも俺自身…触れることが怖かったのかもしれない…

俺は何事もなかったように、頷く。

「…真由…お帰り…俺の方こそ、ごめん…これからはもう少し、早く帰れるように努力するよ」

「清春さん…来て…」

真由が俺を、濡れた目で見つめながら手を伸ばす…。

「ああ…」俺は、意を決して…ソファに座る真由にゆっくりと手を伸ばした…。