160 / 544
清春編
自問
しおりを挟む
「っ……はぁ なんとか、着きましたね…石塚さん、濡れませんでしたか…?」
茉優子の肩を抱くようにしながら傘を片手に走り、駅裏のコンビニの屋根の下に入った俺は、濡れそぼった折り畳み傘を畳みながらそう、彼女に声を掛ける。
「ええ… すみません…!本当に、助かりました…坂下さんは…?濡れたんじゃないですか…」
「いえ…全然…それより石塚さんは…」
「あ… …」
「あー …」
俺と茉優子は、互いに顔を見合わせる。
「お互いに…身体半分、濡れネズミ…ですね… いやいや、濡れすぎでしょう…石塚さん…だからもっと俺に近寄ってと、言ったのに…」
茉優子の服が…カーディガンの色が濡れてさらに濃い色に変色している…。
「坂下さんこそ… スーツ半分、完全に濡れてます…風邪ひいちゃいますよね…私が入れてもらったばっかりに…本当にごめんなさい…」茉優子は心から申し訳なさそうに頭を下げる。
「とにかく、傘を買われたらいかがですか…?俺はここで待っていますから…」
「あ…はい…買ってきます…」
茉優子が素直に応じて、店内へ脚を踏み入れる。
その後ろ姿をぼうっと見つめながら、俺は自問する…。
なぜ… 待つ必要がある…?
既に目的は果たした。
茉優子の身体を半分濡らしてしまったとはいえ、彼女をなんとか屋根がある場所まで送り届けたのだ…。
ここで、ではさようならと言えば済む話ではないか… なのに、なぜ…
俺は自分自身に問いかける。
答えは、明白だった…。
茉優子の肩を抱くようにしながら傘を片手に走り、駅裏のコンビニの屋根の下に入った俺は、濡れそぼった折り畳み傘を畳みながらそう、彼女に声を掛ける。
「ええ… すみません…!本当に、助かりました…坂下さんは…?濡れたんじゃないですか…」
「いえ…全然…それより石塚さんは…」
「あ… …」
「あー …」
俺と茉優子は、互いに顔を見合わせる。
「お互いに…身体半分、濡れネズミ…ですね… いやいや、濡れすぎでしょう…石塚さん…だからもっと俺に近寄ってと、言ったのに…」
茉優子の服が…カーディガンの色が濡れてさらに濃い色に変色している…。
「坂下さんこそ… スーツ半分、完全に濡れてます…風邪ひいちゃいますよね…私が入れてもらったばっかりに…本当にごめんなさい…」茉優子は心から申し訳なさそうに頭を下げる。
「とにかく、傘を買われたらいかがですか…?俺はここで待っていますから…」
「あ…はい…買ってきます…」
茉優子が素直に応じて、店内へ脚を踏み入れる。
その後ろ姿をぼうっと見つめながら、俺は自問する…。
なぜ… 待つ必要がある…?
既に目的は果たした。
茉優子の身体を半分濡らしてしまったとはいえ、彼女をなんとか屋根がある場所まで送り届けたのだ…。
ここで、ではさようならと言えば済む話ではないか… なのに、なぜ…
俺は自分自身に問いかける。
答えは、明白だった…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
70
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる