156 / 544
清春編
男
しおりを挟む
「あ…清春さん…?お帰りなさい…びっくりしちゃった!今日は早いのね…!」
「ただ…いま、…真由…」
「ああ…お帰り、清春君… お邪魔してます。」
真由の横に座っていたのは…やはり、真由の兄、哲也だった。
亭主の留守中に知らぬ男が家に上がり込んでいるというのは、不倫などでもない限り通常考えにくい。
玄関で男物の靴に気付いた瞬間から、哲也ではないかと察しがついていた。
「こんばんは。お兄さん…」
俺はリビングで、ソファに真由と並んで座っていた哲也にお辞儀をして、まず真っすぐに自室へ向かった。
また、兄が来ている…。
もしかしたら、俺の教室の日に、かなりの頻度で来ていたりするのだろうか…
ネクタイを取り去り、部屋着に着かえようかとも思ったが、哲也がいる手前、
あまりだらしのない格好で出て行くのは良くないと思った。
取り敢えずシャツのままがいいか…
そう考え直してリビングへ戻り、2人を横目に冷蔵庫から2リットルのお茶のペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。
「清春さん…英会話教室には行ったの?夕飯は…食べて来た?それともまだ…?」
真由が俺の方に首を向けて声を掛けてくる。
「ああ…教室には行ったけど、今日は食べずに帰って来たんだよ…」
何か食べる物あるかな…という言葉を、口に出す前に寸前で飲み込む。
真由にそんなことを言ったところで、期待できない…
そもそも哲也がいることで、言いづらいこと、この上なかった…。
「清春君…実は俺の職場近くにある中華料理の店の、美味しいと評判の餃子を買ってきたんだ…
チャーハンもあるし、一緒に食べないかい…?俺達も食事はまだなんでね…ついさっき来たばかりで…」
「そうなんですか…ありがとうございます…」
哲也の、俺達…という言葉に、少しの違和感を覚えた…。
俺達…
つまり、哲也と真由だ… 二人は両親がいない、たった二人きりの肉親…
わかる…わかるのだが… なんとなく…
俺が蚊帳の外のように感じた…
いや…そんな風に思う俺の方が、心が狭いというか、おかしいのかもしれない…。
「今から準備するね!待ってて、お兄ちゃん、清春さん」
真由は明るくそう言って立ち上がり、鼻歌を歌いながら、いそいそと皿を準備し始めた。
「ただ…いま、…真由…」
「ああ…お帰り、清春君… お邪魔してます。」
真由の横に座っていたのは…やはり、真由の兄、哲也だった。
亭主の留守中に知らぬ男が家に上がり込んでいるというのは、不倫などでもない限り通常考えにくい。
玄関で男物の靴に気付いた瞬間から、哲也ではないかと察しがついていた。
「こんばんは。お兄さん…」
俺はリビングで、ソファに真由と並んで座っていた哲也にお辞儀をして、まず真っすぐに自室へ向かった。
また、兄が来ている…。
もしかしたら、俺の教室の日に、かなりの頻度で来ていたりするのだろうか…
ネクタイを取り去り、部屋着に着かえようかとも思ったが、哲也がいる手前、
あまりだらしのない格好で出て行くのは良くないと思った。
取り敢えずシャツのままがいいか…
そう考え直してリビングへ戻り、2人を横目に冷蔵庫から2リットルのお茶のペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。
「清春さん…英会話教室には行ったの?夕飯は…食べて来た?それともまだ…?」
真由が俺の方に首を向けて声を掛けてくる。
「ああ…教室には行ったけど、今日は食べずに帰って来たんだよ…」
何か食べる物あるかな…という言葉を、口に出す前に寸前で飲み込む。
真由にそんなことを言ったところで、期待できない…
そもそも哲也がいることで、言いづらいこと、この上なかった…。
「清春君…実は俺の職場近くにある中華料理の店の、美味しいと評判の餃子を買ってきたんだ…
チャーハンもあるし、一緒に食べないかい…?俺達も食事はまだなんでね…ついさっき来たばかりで…」
「そうなんですか…ありがとうございます…」
哲也の、俺達…という言葉に、少しの違和感を覚えた…。
俺達…
つまり、哲也と真由だ… 二人は両親がいない、たった二人きりの肉親…
わかる…わかるのだが… なんとなく…
俺が蚊帳の外のように感じた…
いや…そんな風に思う俺の方が、心が狭いというか、おかしいのかもしれない…。
「今から準備するね!待ってて、お兄ちゃん、清春さん」
真由は明るくそう言って立ち上がり、鼻歌を歌いながら、いそいそと皿を準備し始めた。
0
こちらの作品は、ホラー・ミステリー大賞に応募しています。投票いただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる