【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

自己嫌悪

はあ…　　

それにしても、今日…　
空になったコップを下げようと手を伸ばし、偶然お互いの手が少しだけ触れたあの瞬間…

大袈裟ではなく、
ビリっと微弱な電流が走ったような、気がした…。

「あっ、すみません…！」
「いえ、…」

茉優子も驚いたようで、すぐにその白い手をテーブルの下に引っ込めてしまった…。

俺の脳内に流れ込む、警報…。
茉優子の左手の薬指に…キラリと光る指輪が、主張してくる…。

既婚者だ…　この女は既婚者、なのだ…　　
こんな、慎ましやかな…清楚な態度で、どれだけ男に…おまえに接していても…
家に、男がいる…　当然に、旦那がいるのだ…　

夜は、ベッドの上で身体を開かれ…　内部を暴かれ…男のいやらしい攻めに、みだらに嬌声をあげているかもしれない…おまえだって、外では聖人君子の顔をして、家ではいやらしく妻を抱くだろう…？
決して、この女に、不埒な気持ちを持ってはならない…


ああ…　
何だろう…
この、感じは…　この感情は、　ヤバい…　

俺には真由がいる…　
あんなにも誰もが羨む、女として最高に魅力的な真由がいるのだ…

でも…　　彼女の…　茉優子の、白く、華奢過ぎる首筋…　セクシーな鎖骨…。
座敷に上がる瞬間にのぞいた、スカートの裾からのびた、綺麗な脚…。

「あ、っ…　…　う　…嘘…　だろ…　は…　」

俺は、呆然とする…。

彼女の姿を…　茉優子の身体のラインを…
今夜、目にした彼女の白い肌…を思い出していた俺の…

その…部分は…　お湯を浴びながらも…　
完全に、堅くなり…男の兆しを見せていた…。

真由も…　
真由の兄さえも今、同じ屋根の下にいるというのに…　

抑えなければ…
この感情は、正しくない…　
衝動も、行動も…すべてが、許されない…
道に反している…。　

俺はいきり立つそれをなんとか…自分の手で、宥めるようにして鎮め…　
自己嫌悪に陥りながらも、

　静かに、　バスルームを後にした。