【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

誘い

茉優子が入会してきて2か月ほど経った頃、
ふと、英会話教室から出て気付く…。

斜め向かいのトンテキ屋が目に入った。　

ああ…　そうか…　　　そうだ…　

もしかして彼女は、あの時の女性…ではないだろうか…　…

服装も黒とかグレー…　
細身で線が細い感じも、なんとなくあの時の彼女と似ている…。

俺がその店をぼうっと見つめていると、

「坂下さん、あのお店，行かれたことあります…？実は私、結構、常連なんですよ。」
「え…　？」背後から突然、茉優子に声を掛けられ、胸がドキリとする。
「あ…ごめんなさい、驚かせて…でもまだ行かれていないなら是非行かれてください。トンテキ、すごく美味しいですし、ほら…窓側にカウンターもあるから、おひとり様でも入りやすいお店なんですよ。」

やはりそうだ…きっと、そうだ…
彼女…石塚茉優子はあの時、一人でカウンターにいたあの女性だ…。
現実の茉優子と記憶の彼女が一致した。

俺の心はなぜか、少しだけ高ぶった。
「あの…　良かったら…今度教室の後に一緒に夕飯でも…どうですか…？トンテキの店でも、別の店でも…」

気付けば、そう、口にしていた…。

俺は動揺する。
何を…言ってるんだ…彼女は既婚者だ…困るに違いない。
すぐに、撤回だ…「あ、あの…すみません、今のは…」俺が撤回する前に、

「…行きたい　…　です…　でも、よろしいのですか？ご一緒しても…？」

少し、頬を紅く染めているように見えたのは気のせいだろうか…。

俺は高鳴る気持ちをなんとか冷静に抑えるようにしながら
「もちろんです…是非…」と、笑って、答えていた…。