【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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清春編

真由の基準

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俺はその後も仕事に追われ、会社と家の行き来しかないなんとも疲労がたまるつまらない日々を過ごしていた。

相変わらず家庭では朝も夜も手の込んだ料理は出されない。

唯一真由が色々なことを頑張るのは、人を招く時だけだ。

もともと職場が一緒だったため、共通の知り合いも多く、今となっては俺と真由の仲を取り持ってくれたような形になった黒沢先輩も、既にこの家には訪問済みだ。

真由は先輩の訪問の前日、驚くことだがほぼ徹夜で部屋の片付けをし、料理もいつもとは違いすぎる手の込んだものをどうにか用意した。もちろんデリバリーも組み合わせて、豪華なお皿に上手に盛り付け、なんとかその場を取り繕った。

家に来た人は大抵、こんなニュアンスのことを口にする。

おまえ料理のうまい、良い嫁さんを貰ったな。
仕事まで辞めさせて、おまえだけの専業主婦にして可愛い真由ちゃんを独占かよ、いろんな意味で最高だな…
なんて、何度冷やかされたことか…。

違う…俺は真由に仕事を続けて欲しかった…事実、やめてくれだなんて一度も言ったことがない。料理だって全然だ…
…なんて…そんなことを周りに言っても、そもそも言うだけ、無駄な気がした。
言ったってきっと真由に怒られて、俺にとってはなんの得にもならないだろう…

真由の外見と、外の評判がいいのはずっと前からだ…。
こればかりは一緒に暮らさないとわからないだろうなと、俺は一人、はっきり言って諦めの境地だ。

不思議だったのが、哲也の訪問だ…。

真由の兄…哲也の訪問の日は、真由は異常なくらいに色々なことに、気を配る。
部屋の隅から隅まで、チリひとつないくらい徹底的に掃除するし、料理は何日か前から練習しているほどだ。

情けないことだが、その試作品が唯一俺が食べられる真由の手料理と言っても過言ではないかも…しれない。

母は違うとはいえ兄弟だ…

そこまで気を張らなくていいんじゃないか、ありのまま見せても…と何度言っても、真由の耳には右から左だ。

正直その頃、
俺には真由の基準が、さっぱりわからなかった。



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