【完結・R18】鉄道の恐怖

清春編

威厳

「ああ…すごく美味しかったね、ここの料理…このお店は清春君のチョイスかい？」

哲也がナプキンで口を拭いながら俺を見る。

「はっ…はい！雑誌とか色々調べてはみたんですけど、あり過ぎてわからなくなって…結局職場で女の子達に聞いたんです。良いお店ないかって…そしたら何人かがおすすめしてくれたんで…」

「そうか…清春君は性格が穏やかそうだから、友人が多そうで良いね。見た目も格好がいいし、女性にもさぞかしモテそうだ… 最近は会社も女性の方が多い職場もあるくらいだから…真由以外にも、いくらでも結婚の相手候補はいたんじゃないのかな…？」

「え… ？… いえ、そんな…」

哲也にそんなことを言われ、一瞬動揺する。
俺は…探られている…？試されているんだろうか…。

見ると、哲也はいたって真顔だ…
冗談のようにも聞こえない。
整っている顔だけに、余計に冷たい印象を受ける…。

「やだ…お兄ちゃん…変なこと、言わないで…ほらまた…清春さんが驚いているじゃない…もう…」

「…あの…私には、真由さんだけです… 真由さんを、心から愛しています。
職場に女性の友達…もちろ同僚もいますが、同僚は同僚…真由さんと比べたことも、その女性陣に心を動かされたこともありません。」

「…ほう…」哲也が…腕組みをしたまま、長い脚をゆっくりと組み替える。
本当にまるで…兄ではなく、威厳のある父親のようだ…

きちんと自分の意志を…
真由を幸せにすると誓わなければ…
咄嗟にそう思った。

「あの…ですからっ…」
俺が言葉を続けようとすると、

「…もう…いいでしょう、お兄ちゃん…あまり、清春さんをいじめないでよ… 私、今すごく…本当に十分、幸せなんだから…」
真由が、助け舟を出す｡

　　　　　　　だが、俺は続ける。