【完結・R18】鉄道の恐怖

雑音

「おや…顔色が優れないようですけど、…大丈夫ですか…？」

男がわざとらしく、尋ねる。

「驚きましたか…でも言ったでしょう？私は何でも…知っていると。貴女と清春がお互いの伴侶を裏切って密かにホテルで抱き合って…セックスしていたことも…　貴女の自宅の場所も…仕事も全て。」

セックス…

そのキーワードを発せられた時、思わず周りを振り返る…だが、幸いついさっきまでいた、近くの席の客は既にいなくなっていた。

「ああ…周りが気になりましたか…？失礼。
でも、人に聞こえてはまずいことをする、貴女がたが悪いと思いますよ…
あ…そうそう、あの写真はともかく、私は実のところ、もっと凄いものを…手にしていたり…します。
画像と同等レベル…いや、下手をするともっと…危ない…データを…」

男が私を見て、
楽しそうに、ゆっくりと目を細めて笑う。

嫌な笑い方だ…獲物を捕らえて離さない蛇のような目付き…切れ長な目であるせいか、余計に恐ろしい。
本当にこの男は私をとことん脅すつもりらしい…。

データとは一体…
もしかすると、私と清春のラインのやり取りなどの履歴…だろうか…

私はもちろん、すぐに消去しているが、清春がそうだとは限らない…

そのデータが何を指すのか、聞くのも恐ろしい気がしたが男が更に続ける。

「貴女、確か毎朝、イヤフォンで音楽か何か…聞いていましたよね…？どうぞ…これに差し込んで、聞いてみてください。とても面白いものが聞けますよ…」

男が自分のスマホを差し出す。

とても嫌な…予感がする… 

聞かずにいた方が良いのかもしれないとも、考える…

でも、このままだと…

このまま現実から逃げていると…男の正体も、目的も全て、何もわからないままだ…

私は男から端末を受け取り、イヤフォンを差し込む。

「準備はいいですね？　
…では押しますよ、はい…スタート…」

　…雑音が酷いが、何か遠くから聞こえる…