【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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気付けば、喫茶店の店内の客はなかなかに、増え始めていた。

時間はまだ朝の9時過ぎ…モーニングメニュー目当ての客なのか、次々と新たな客が入店してくる。

周りのざわめきに少し気を取られつつも、私がその男の質問に答えるべく口を開こうとすると、「良かったら…店を変えましょうか…?というか、貴女、もう朝食は食べましたか…?」
男が、さきほどとは打って変わったような穏やかな表情で、私に問いかける。

…もちろん、食べていない…。

私が早朝の電車で通勤するわけは、電車内が比較的空いているという理由ももちろんあるが、もう一つは、早めに職場近くに到着したうえで、近くのカフェで朝のゆっくりとした時間を楽しむことにあった。

これでも、結婚当初は毎朝二人分の食事の準備をして、夫と仲良く穏やかに、食事の時間を過ごしていたのだが、今ではとても考えられない…もはや精神的に、絶対に無理なのだ…

ある時期を境に、私は夫といても全く気が休まらず、接触する機会が増えれば増えるほどに「負の感情」しか生まれてこなくなってしまった…。
だから私は敢えて、極力夫と顔を合わさずに済むように、早朝に家を出るようにしていた。
もちろん、夫には理由を言わずに…。

ただ、だからと言って、今、この状況で、食欲があるかと聞かれれば、答えはノーだ…

とても、美味しく食べられる気がしない…仮に、何かを口にしても、今はろくに味がしないかもしれない…咄嗟にそう考え「いえ…食べていませんが、お腹は空いていません。」と…そう、正直に答えた。

男はニヤリと笑いながら、「困ったな…俺は空腹なんですよ…だからまあ、とりあえず二人分注文しますので、なんとなく、食事に付き合ってもらえませんか…腹がへっては戦は出来ぬと言いますから…とりあえず少しでもお腹に入れてください…」

男はそう言って笑って、すぐさま近くの女性店員を呼び、独断で
「Cセット2つお願いします。飲み物はアイスコーヒーとオレンジジュースで…」と、注文を済ませる…。

…強引な男…

一体…私はこんなところで…こんな得体の知れない男と…何をしているんだろう…

仲良く朝食を囲む間柄でもないのに… おかしな…状況だ…全く楽しめない…

早く、なんとかして家に帰りたい…
男の少しだけ、楽しそうな表情を見つめながら、私は脱力した…











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