【完結・R18】鉄道の恐怖

もえこ

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命令

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「さて…ここで話はなんですから、どこか屋内に入りましょう…あ、それと…職場に電話をかけるんでしたよね」

男は言いながら、私から身体を離し、何かを調べるように携帯を手にする…。

逃げるなら…今しかない…

その、身体が物理的に自由になった一瞬の隙をついて… 私が男の横から走り出そうと身動きをした瞬間…

「…う、おっ…!っと…  …へぇ…」すぐに手首を強い力で、掴まれる…

「痛っ…あ…」…私はすぐに…落胆する。
自分自身の…不甲斐なさに…無力さに…そして、この状況に…

「貴女…電車内では完全に怯えて固まっていたから…途中で隙をついて逃げ出したりは絶対にしないと…無駄と思われる馬鹿な試みはしない理性的な女性だと…私はそう、踏んでいたんですが… へえ…そう、くるんですか…ふむ…」

まるで、他人事のように話しながら、なにやら分析しながら、私の全身を値踏みするかのように上から下まで…見つめる。

「うん、…やはり、今の動きは予想外です… では、私も容赦しませんよ…これは、命令です…黙ってついて来なさい…。」

男が私の腕をつかみなおし、かなり強引に、ホームから階下の改札へとつながるエレベーターに乗せる。

四角い無機質な箱の中…息が詰まりそうな…密室…

男が私を見下ろし、無言のまま…いやらしく、舌なめずりをする …

立って並んでみてわかったが、男の身長は恐らく、遠目で見た時と同様、やはり180センチ以上はあり、…逃げようにも到底、力でかなう相手ではない…

もう駄目だ…無計画に逃げ出すことすら危険だ…
私は、このわけのわからない妙な男に…どうやら…今は…従うしかない…

とりあえず、この男が予想していて、先ほどから白状しろと促している私の悪な部分…

そこを…真実を、さらけ出すしかない… 

そして、この男の正体と目的…を、知らないことには…何一つ…身動きが取れない…

私はそう観念し、震えながらも、男についていくことにした。




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