ある女の苦悩

もえこ

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外の世界

確信

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「あっ…、たっ … た… あっ…」

おかしい…
まともに声を発することができない…。
この男の名前は… ?

この… 今私の崩した、膝の前で…真っ白な顔で… 
まるで、生気のない顔で、マネキンのように横たわるこの男の名前は…

なんだったか… 田… 田…田坂… ?田崎… ??
ああ… 全く、思い出せない…

いや、もはや… 名前などどうでもいい… 

まさかとは思うが、死んではいないだろうか… 

私は再び、男の顔を見る…。

くっきりとした眉…高い鼻梁… 
目は閉じているが… ほんの数ミリだけ、開いているようにも見える…
それが白目を剥いているようにも見え、怖い…。

ああ… 寒い… 

やがて、私は自分がガタガタと震えていることに気付いた…。
もちろん、空気が冷たいということではない… 
ゾクゾクと、身体の中に走り抜けていくような寒気がした。

男の名前を不意に思い出した。

そうだ、田島…  
田島さんだ…。

「た… 田島さん… 田島さんっ…!!」

私は思い出したように、再び先ほどより大きな声で、その男の肩を揺さぶる…。

「あ… あっ…  」

やはり、反応がない… 
全身裸の…行為後の男が、仰向けに倒れている… 


気が動転して、どう動くのが正しいのかわからない中、やっと心臓の音を確認するべきだと思い始める。

私はそっと、先ほどまで私の上にのしかかっていた逞しい男の胸に…耳を当てた。

ドクドクドクドク… トクントクントクントクン…

私が想像する音…  祈るように私は耳をそばだてる…

だが、するべき音がしない… 
そこから聞こえる音は、ただただ、無 だった…。

私の髪が、男の肌に少し擦れる音…  ただ、それだけだった。

「う… 嘘…  …よ、ね 」

私は思わず、そう呟いていた。

だが、嘘でも夢でもない… 男は死んでいる。

たった今、死んだのだ…
そう確信した、恐るべき瞬間だった。

 
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