8 / 24
僕のイライラ
しおりを挟む「今夜は寝台を使ってください。私は床でも椅子でも構わないので」
「そ、それは身体に悪いだろう」
「殿下を寝台以外で寝させることの方が問題です」
ミアは最もらしく言い募り、風邪を引くと困るので掛けるものは借りたいですと告げる。
そんなミアを前にして、皇子は青かった顔を一変させ赤くなりながら宣言した。
「い、一緒に寝台を使えばいいじゃないか」
ミアは驚きのあまり目を瞬かせ、本気なのか問うように首を傾げた。
「……私は構いませんが、殿下は大丈夫なのですか?」
私は今日会ったばかりの人ですよ、と当たり前のことをミアが丁寧に告げると、頬を赤らめながらも皇子は頷いた。
「だって、何もしないと約束してくれただろう?」
ミアを見る皇子の目は純粋そのものだった。この人はこんなに無垢なのによくぞ今まで頭から喰われてしまわなかったものだと、ミアは感心していた。
一度言い出した手前引けないのか、皇子が積極的に寝台に上がるように勧めてくるのでミアは皇子に気を遣いながら控えめに寝台に腰を下ろした。
「それで寝れるんですか?」
ミアが寝台に上がった途端、皇子は出来るだけ距離を取ろうとしてか寝台の端に身を寄せてしまう。
それだと眠れないのではないかと思ったミアが声を掛けると、皇子はようやくそろそろと足を伸ばし始めたが、依然として体も顔も強張っている。
「……すぐには、眠れないかもしれない」
「そうですか。私も特に疲れていないので、まだ眠くないです」
遠くから今日来たばかりなのに、と驚いて目を瞬かせる皇子にミアは曖昧に微笑んだ。
「あ、そうだ。何か本とかないか?眠くなるまで、読みたいんだが」
「すみません。本は勉学の為なら読むのですが、趣味では読まないので、ここには持ち込んでいません」
あまり後宮に長居するつもりはないので、という言葉は流石に無礼過ぎるだろうと飲み込んだ。
「殿下は本がお好きなのですか?」
「……本は、読むと自由になれるから、好きだ」
遠くを見るように目を細めて寝台に寝転ぶ皇子から距離を保ったまま、ミアはそっと寝台の端に寝転んだ。
「では、眠くなるまで殿下の好きな本のお話を話してくれたら嬉しいです」
それなら暇潰しになるだろうとミアが提案すると、皇子は安心したような笑顔で頷いた。
「ああ、いいぞ」
何の話がいいか、と視線を巡らせる皇子は同じ年回りだというのにやはり庇護欲を煽るほど幼く見えるのだ。
ミアは小さく笑みを零しながら皇子の話に耳を傾けた。
「そ、それは身体に悪いだろう」
「殿下を寝台以外で寝させることの方が問題です」
ミアは最もらしく言い募り、風邪を引くと困るので掛けるものは借りたいですと告げる。
そんなミアを前にして、皇子は青かった顔を一変させ赤くなりながら宣言した。
「い、一緒に寝台を使えばいいじゃないか」
ミアは驚きのあまり目を瞬かせ、本気なのか問うように首を傾げた。
「……私は構いませんが、殿下は大丈夫なのですか?」
私は今日会ったばかりの人ですよ、と当たり前のことをミアが丁寧に告げると、頬を赤らめながらも皇子は頷いた。
「だって、何もしないと約束してくれただろう?」
ミアを見る皇子の目は純粋そのものだった。この人はこんなに無垢なのによくぞ今まで頭から喰われてしまわなかったものだと、ミアは感心していた。
一度言い出した手前引けないのか、皇子が積極的に寝台に上がるように勧めてくるのでミアは皇子に気を遣いながら控えめに寝台に腰を下ろした。
「それで寝れるんですか?」
ミアが寝台に上がった途端、皇子は出来るだけ距離を取ろうとしてか寝台の端に身を寄せてしまう。
それだと眠れないのではないかと思ったミアが声を掛けると、皇子はようやくそろそろと足を伸ばし始めたが、依然として体も顔も強張っている。
「……すぐには、眠れないかもしれない」
「そうですか。私も特に疲れていないので、まだ眠くないです」
遠くから今日来たばかりなのに、と驚いて目を瞬かせる皇子にミアは曖昧に微笑んだ。
「あ、そうだ。何か本とかないか?眠くなるまで、読みたいんだが」
「すみません。本は勉学の為なら読むのですが、趣味では読まないので、ここには持ち込んでいません」
あまり後宮に長居するつもりはないので、という言葉は流石に無礼過ぎるだろうと飲み込んだ。
「殿下は本がお好きなのですか?」
「……本は、読むと自由になれるから、好きだ」
遠くを見るように目を細めて寝台に寝転ぶ皇子から距離を保ったまま、ミアはそっと寝台の端に寝転んだ。
「では、眠くなるまで殿下の好きな本のお話を話してくれたら嬉しいです」
それなら暇潰しになるだろうとミアが提案すると、皇子は安心したような笑顔で頷いた。
「ああ、いいぞ」
何の話がいいか、と視線を巡らせる皇子は同じ年回りだというのにやはり庇護欲を煽るほど幼く見えるのだ。
ミアは小さく笑みを零しながら皇子の話に耳を傾けた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
ミズルチと〈竜骨の化石〉
珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。
一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。
ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。
カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
銀河ラボのレイ
あまくに みか
児童書・童話
月うさぎがぴょんと跳ねる月面に、銀河ラボはある。
そこに住むレイ博士は、いるはずのない人間の子どもを見つけてしまう。
子どもは、いったい何者なのか?
子どもは、博士になにをもたらす者なのか。
博士が子どもと銀河ラボで過ごした、わずかな時間、「生きること、死ぬこと、生まれること」を二人は知る。
素敵な表紙絵は惑星ハーブティ様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる