10 / 13
自立
しおりを挟む
「ご…ごめん、ちょっとぼうっとしてて…」
「や、ぜーんぜん…でも、美優ちゃんが…美優が…黙りこんだからさ…俺てっきり…」
今まで、美優ちゃんと呼ばれてきた…でも、今美優って、呼び捨てに…?
「俺さ、なんか変な地雷踏んじゃったのかと思った…一瞬…なんか触れちゃいけない話だったのかなってさ…」
「そんなこと、ないよ…あっ…さっきの話の続き…わざわざ聞いてはいないけど…おじさんに彼女はいないと思う…だから…私はいまだに、家に…いる感じかな…。」
「…へえ…でもさ、さすがに美優ちゃん…美優も、…あ…なんかごめん、恥ずくなってきた…あの、美優って呼び捨てしてもいい…?…てか、ごめんさっきから既に、チャレンジしてるけど…」
「あ… うん… 全然いいよ… 」
「良かった…その、…さすがに美優も仕事してて、自立してるし…そろそろ一人暮らしとか考えたらどうかな…」
「そう…かな…やっぱり、そんな時期だよね…」
「…さすがにずっと…そのおじさんの家に厄介になるのは良くないと思うな…」
「ん…私もそう思う…」
「それとさ…」彼が、なんとなく言いづらそうにコップの水を飲み干す姿にドキリとした。
「ん…?」
「そろそろ…なんかさ、どっちかの家で落ち着きたいっていうか…ほら、食後に家で珈琲飲むとか…週末に家で、まったり映画、見るとか…さ…」
「あ… … 」
真っ直ぐに注がれる彼の視線が…彼の、真っ黒な眼が…微妙に色を帯びたような気がした。
彼と付き合ってもう…一月と少し…。
いまだ、彼と手を繋ぐことまでしか経験していない…。
何度目かの食事で、私が今まで誰とも付き合ったことがないと口走ってしまったからだ。
25歳にもなって交際経験がないなんて笑われると思ったが彼は笑わずに…むしろ嬉しいくらいだと笑ってくれた。
「そ…そう、だね…そろそろもう一度…」
「…ん…?」彼が私の顔を覗き込む…。
「前におじさんに一人暮らしを提案してから数年経つし…もう一度おじさんに話してみようかな…」
このままだと、私は一人で立つことが出来ない。
就職したてのあの頃の私とは違う。
仕事にも慣れたし、今は彼氏だってできたし、土日は食事だって作っているのだから、今の私で家事に困ることは、ほとんどないはずだ…。
「そうだね…何なら俺、物件一緒に回るよ?友達にこの辺の不動産に詳しい奴いるし」
「ありがとう。」
もう、私だって25歳…立派な大人だ…大人でなければならない。
結婚をしたっておかしくない年齢なのだから…さすがにおじさんも承諾してくれるだろう。
そんな密かな期待が、私の中に渦巻き始めていた。
「そうなったら、なんか色々…すごく楽しい気がするな…あ、冷める…とりあえず食べよう。」
促されて視線を落とすと、
テーブルに置かれた枝豆のポタージュスープから湯気が消えてしまっていることに気付く…。
「うん、いただきます…。」
いっそ、今日…今夜、おじさんに話してみようか…。
そんなことをうっすらと思いながら、
私はゆっくりと、
きらきらと光る銀のスプーンを手にした。
「や、ぜーんぜん…でも、美優ちゃんが…美優が…黙りこんだからさ…俺てっきり…」
今まで、美優ちゃんと呼ばれてきた…でも、今美優って、呼び捨てに…?
「俺さ、なんか変な地雷踏んじゃったのかと思った…一瞬…なんか触れちゃいけない話だったのかなってさ…」
「そんなこと、ないよ…あっ…さっきの話の続き…わざわざ聞いてはいないけど…おじさんに彼女はいないと思う…だから…私はいまだに、家に…いる感じかな…。」
「…へえ…でもさ、さすがに美優ちゃん…美優も、…あ…なんかごめん、恥ずくなってきた…あの、美優って呼び捨てしてもいい…?…てか、ごめんさっきから既に、チャレンジしてるけど…」
「あ… うん… 全然いいよ… 」
「良かった…その、…さすがに美優も仕事してて、自立してるし…そろそろ一人暮らしとか考えたらどうかな…」
「そう…かな…やっぱり、そんな時期だよね…」
「…さすがにずっと…そのおじさんの家に厄介になるのは良くないと思うな…」
「ん…私もそう思う…」
「それとさ…」彼が、なんとなく言いづらそうにコップの水を飲み干す姿にドキリとした。
「ん…?」
「そろそろ…なんかさ、どっちかの家で落ち着きたいっていうか…ほら、食後に家で珈琲飲むとか…週末に家で、まったり映画、見るとか…さ…」
「あ… … 」
真っ直ぐに注がれる彼の視線が…彼の、真っ黒な眼が…微妙に色を帯びたような気がした。
彼と付き合ってもう…一月と少し…。
いまだ、彼と手を繋ぐことまでしか経験していない…。
何度目かの食事で、私が今まで誰とも付き合ったことがないと口走ってしまったからだ。
25歳にもなって交際経験がないなんて笑われると思ったが彼は笑わずに…むしろ嬉しいくらいだと笑ってくれた。
「そ…そう、だね…そろそろもう一度…」
「…ん…?」彼が私の顔を覗き込む…。
「前におじさんに一人暮らしを提案してから数年経つし…もう一度おじさんに話してみようかな…」
このままだと、私は一人で立つことが出来ない。
就職したてのあの頃の私とは違う。
仕事にも慣れたし、今は彼氏だってできたし、土日は食事だって作っているのだから、今の私で家事に困ることは、ほとんどないはずだ…。
「そうだね…何なら俺、物件一緒に回るよ?友達にこの辺の不動産に詳しい奴いるし」
「ありがとう。」
もう、私だって25歳…立派な大人だ…大人でなければならない。
結婚をしたっておかしくない年齢なのだから…さすがにおじさんも承諾してくれるだろう。
そんな密かな期待が、私の中に渦巻き始めていた。
「そうなったら、なんか色々…すごく楽しい気がするな…あ、冷める…とりあえず食べよう。」
促されて視線を落とすと、
テーブルに置かれた枝豆のポタージュスープから湯気が消えてしまっていることに気付く…。
「うん、いただきます…。」
いっそ、今日…今夜、おじさんに話してみようか…。
そんなことをうっすらと思いながら、
私はゆっくりと、
きらきらと光る銀のスプーンを手にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる