【ミステリー】質問の答え

もえこ

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メリット

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「ねえ…おじさん。ズバリ聞くけど…彼女とかいないの…?」

確か、数年間にもそうやって、おじさんに思い切って尋ねたことがある。
数年に一度は、聞いている質問…。

あれは、私の就職が決まった時のことだ。

両親を亡くした身寄りのない私を、血縁関係にないおじさんが引き取って育ててくれて10年以上…。

小学校、中学校、高校、そして、学費もかなりかかってしまう大学にまで行かせてくれた。 
何不自由なく育ててもらった私は、いつも気になっていたのだ。

おじさんは本当に実の親子のように私と接してくれて、私の中には感謝しかないがそれと同時に、なぜこんなにも赤の他人である私に、良くしてくれるのか…。

血の繋がりがない以上、育てる義務も、メリットもない。
むしろ、これまでの私にかかった学費、生活費…
そしてなにより、おじさんが自由にできる時間と空間を奪っているのではないか…。
物心ついた頃から、なぜおじさんはこんなにも根気強く、私を育ててくれるんだろう…。
そんな気持ちしか、湧いてこなかった。

就職の際、既に二十歳を超えていた私は、さすがにおじさんにゆっくりと時間を作ってもらって申し出た。

家から出て、職場近くのアパートを借りて一人暮らしをしようと思うと。
既に、物件もいくつか当たっていた。
その見取り図まで示して、おじさんに話をした。

これで、おじさんに我慢や負担を強いることはない…。
そして、就職してからは毎月の給料を少しずつでもおじさんに渡して、感謝の気持ちを伝えたい…。

私なりに考えての提案だった。

だけど… おじさんは私の提案を、見事に一刀両断して見せたのだ。




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