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〜到着〜

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「あ、 …  …」 

夢、だ…

「…大丈夫…?水無月さん… 」

私を心配そうに覗き込む杉崎さんの視線と、目が合う…

「すごく…うなされていたみたいだけど…もしかして、怖い夢でも…見た…?」

杉崎さんの心配そうな声が耳に届く。

怖い夢…
確かに、怖い夢を見た…

怖すぎる夢を見た…

拓海が…私の話を全然、聞いてくれない夢…

私がどんなに別れを告げても…聞き入れてくれず…

理由を言えって、
どんどん、どんどん…詰め寄られる夢…

最後、
拓海が至近距離まで近づいて来て…あり得ないことだけど…叩かれるかと、思った…

現実にはあり得ない、行為… 
拓海が私に暴力を振るったことなんて、一度もないのに…

…拓海が手を伸ばしてきた途端、恐怖に身がすくんだ…

その後、力づくで床に引き倒されて…
拓海が私の上にのしかかってきて…身動きが取れなくなった…

拓海の手が服の上から私の胸をまさぐり…
最後、下に…
下半身に伸びたところで、ぶつりと途切れた…

杉崎さんの、私を呼ぶ声が聞こえた…

それで…  

    それで…

「あの…水無月さん…本当に顔色が悪い…お水を頼もうか…もう直ぐ、着陸体制に入るところだけど… 大丈夫…?」

杉崎さんの表情が、見るからに曇る… 
心配の色が明らかに、その瞳に浮かんでいる…

夢でうなされてこんな風に心配されるなんて…
いい大人が…何をしているんだろう… 本当に、恥ずかしくなる…

「あ…あの…大丈夫、です… 」

「そう… ?」


「 …機体はただいまより…着陸態勢に入ります…  皆さま…  シートベルトを… … 」


「あ… … 」杉崎さんの手が、再び私の手を上から包み込む…。

「もう少しの辛抱、だからね… 目を閉じてるといい…」

「はい… … 」


もうすぐだ…  

空港に着いてから…  
拓海に会って… 杉崎さんとはその場で別れて…

拓海と一緒に自宅に、帰って…
言おう… 言ってしまおう… もう、はっきり別れを告げてしまおう…

拓海がそれで応じてくれれば、それでいい…

だけどもし、さっきの夢みたいに… さっきの悪夢のように…
拓海が逆上して、荒々しく私に別れの理由を尋ねてきたら… 

全てを拓海に言うしか…話すしかない…。
拓海を、裏切ったことを…きちんと謝って… それで…説明しなきゃ…

私が今、誰を好きなのか… 
誰のことを、想っているのか… 

もしかしたら、修羅場になるかもしれない… 
でも、自分の気持ちの全てを、…  全てを拓海に… 伝えなきゃ…
 
私は今、杉崎さんといたい…  
私は、杉崎さんが好きだ…  

きっと、出会った頃… 最初から…
ずっと、好き…  この気持ちはもう、抑えようがない…

この気持ちを隠すことなんて、もう、できない…
杉崎さんから離れることなんて、もうできない…  

私に、拓海がいても… 
杉崎さんに、林さんがいても…

…  
 …  …

「水無月さん…着いたよ…ゆっくり、最後に降りようか… 」

「…はい…」杉崎さんの温かな手…
     この手を、まだ離したくない…

               
 この…優しい声が…どうしようもなく好き…


      私は、

        静かに頷いた。    








 

             ~完~






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