【完結 R18】ほかに相手がいるのに

〜帰路〜

眩暈

ふと、思う…。

もしかしたら拓海はもう…
気付いているのかもしれない。

私のこれまでの言動に…
なんらかの不信感を抱いているのかもしれない…
だからこそ拓海は、いきなりなんの予告もなく東京へ来たのではないか…

もしも私に、仮に拓海以外に誰かいて…しかもその相手を、家に招き入れていたとすれば…いきなりの突撃訪問を交わす術はない…

言い訳や誤魔化しの、しようがない…。
即、終わりだ…
その時の拓海の怒りを想像するだけで怖い。

もう…ダメかもしれない。
本当は近々、私の方から拓海のところまで赴き…外の店に呼び出して、別れ話をするつもりでいた…。

だけどもはや、そんな風に引き延ばすことすら、ダメなのかもしれない…現に拓海は来てしまった。
今夜、拓海に話をするしかない…

夜の拓海とのやり取りを想像するだけで、私は軽く眩暈を覚えた。

ああ…

空港に着いたときに、
杉崎さんは拓海を見て、どんな風に思うだろう…拓海は私と杉崎さんから…何かを感じ取るだろうか…

怖い……  

自業自得なのはわかっていても…
やっぱり、隠れてこんなことをするのは間違っているのだ……

私が、全部悪い…

「… 大丈夫？水無月さん…すごく顔色が悪い気がするけど… 少し、どこかで休んでいこうか。ゆっくり珈琲でも飲む…？お土産を買う時間を考えても、まだ全然、時間はあるからね」

杉崎さんが、いつものように優しい表情で、私の顔を覗き込んでいるのに気付く。

「はい…大丈夫です」

私はなんとかそう答え、ゆっくりと立ち上がった。